ピッチングスタッフ分析 モイネロは先発かセットアッパーか

森唯斗、椎野新、嘉弥真新也、高橋純平、高橋礼、泉圭輔、甲斐野央が移籍、戦力外などでいなくなり、その前年は千賀滉大、田中正義、大竹耕太郎がチームを離れ、陣容がすっかりスリムになった。2年前の22年には、今名前を挙げた10人のうち髙橋純平を除く9人が一軍の試合で登板している。千賀22、嘉弥真56、泉30、森29、甲斐野27、椎野18、田中5、髙橋礼4、大竹2で、合計193イニング投げている。

スリム化して新監督は起用しやすくなっただろう。人材が多ければ故障した選手の補塡が楽になる反面、成績が落ちた選手のスランプ脱出まで待ち切れず、すぐ代わりを用意しようとする。近年のソフトバンクがそういう構造だった。

2013年の日本ハム・栗山英樹監督は、高校卒新人の大谷翔平を13試合に登板させ、そのうち先発は11試合あった。シーズン通算成績3勝0敗、防御率4.23は高校卒としては悪くないが、辛抱のきかない監督ならこんなに起用していない。前年はリーグ優勝しているチームなのだ。

もう少し大谷に付き合っていただく。5月23日にプロ初登板を先発で飾り、6月26日のソフトバンク戦では内川聖一、長谷川勇也にソロホームランを喫し、3失点している。

それでも7月以降、先発で7試合、リリーフで2試合起用し、チームは12年ぶりに最下位に転落しているが、3年後の16年には大谷がチームを牽引して日本一になり、現在の大谷ブームも将来を見据えた起用法によって導かれていることがわかる。

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佐々木朗希(ロッテ)のような体作りを優先すべき選手には抜擢よりトレーニングが重要になり、ある程度体作りがすんでいる大谷のような選手には抜擢が重要になる。そういう見極めができる指導者はこれからのプロ野球界ではますます求められるだろう。

話が長くなったが、そういう選手起用を小久保新監督にはお願いしたい。

今年の陣容を予想すると、モイネロの起用法が難しい。昨年は左ヒジ手術のため7月1日以降、登板がなく、今季は先発転向からセットアッパーに戻るプランが提示されるなど、せわしない。顔ぶれだけでも賑やかだった2年前ならモイネロの先発転向案など湧いてこなかったと思う。

スチュワートJr.も今季25歳になり、若手最後の年になる。ソフトバンク入りした当初は「メジャーのドラ1を拒絶」という部分ばかりが強調され、底知れぬ大物感に翻弄されたが、時折一軍戦で見るスチュワートは160キロのストレートこそあるものの、大谷や佐々木の登場によってその速さが珍しくなくなった今、普通の本格派に見える。

スチュワートは昨年の成績(77.1回投げて与四球42、奪三振67)が示すように、コントロールが不安定(与四球率4.89)で奪三振率7.80も物足りない。今年はスチュワートにとって正念場で、例年のような成績だと、ソフトバンクの育成能力自体に疑問符がつく。

先発候補には、やはりドラフト1位で獲った風間あたりに出てきてほしい。風間は昨年オフ、台湾で行われたウインターリーグでは5試合に出場して1勝1敗、防御率2.45を残している。体ごと押し込むようなストレートの威力は圧巻で、カーブを交えた緩急も健在。大谷のような野球に対する真摯な姿勢が加われば鬼に金棒だ。


図表/書籍「2024年版 プロ野球問題だらけの12球団」より
写真/shutterstock

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