非上場化したほうが幸せではないのか

これはANAPも同じ。2022年4月に東京通信とライブコマース事業を行なう合弁会社を設立し、メタバース空間でショップを展開する新たな取り組みを開始している。

どれも販売チャネルや顧客へのリーチの仕方を変えるという話だ。
2社の課題は中価格帯の需要が減退していることやメインターゲットのニーズ・支出額が変化していること、競合のマス化によるシェアの縮小であって、EC化の遅れは要因の一つであっても主要因ではない。

必要なのはターゲットの年齢やニーズを見据えたリブランディングである。

この取り組みに先行しているのがCECIL McBEEだ。2019年にリブランディングを実施し、ターゲットを18歳から23歳に限定。さらにスマートフォンアクセサリーなどのアパレル以外のアイテムの売上構成比率を高める取り組みを実施した。服に固執せず、女性が今、身に着けたい、持ちたいと思うアイテムに的を絞ったのだ。

ターゲットをピンポイントに絞り込むというのは非上場企業らしいやり方だが、今のCECIL McBEEが20~30代に支持されるniko and...に勝つのは難しく、ましてやユニクロ、GUなどのマス向けブランドにはとうてい敵わない。

Samantha Thavasaの店舗 写真/shutterstock
Samantha Thavasaの店舗 写真/shutterstock
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限られた市場で細く、長くということになるが、生き残りの戦略としてはそれは真っ当なものだ。

サマンサタバサは非上場後も上場企業コナカの傘下であり、ANAPは上場維持に向けた計画を立てている。

ファッション業界での再生という観点では、両社ともに完全なる非上場企業となったほうが動きが取りやすいと言えるのかもしれない。

取材・文/不破聡