不本意だった異動

この異動は、本人にとってかなり不本意だったらしい。というのも、金融機関では一般に判断を伴う判断業務のほうが判断を伴わない定型業務よりも高く評価される傾向があるからだ。

写真はイメージです
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とくに融資課は花形であり、そこで成果を出して認められたいという願望が強かったのか、定型業務部署への異動を左遷のように感じたらしい。しかも、融資課には正社員の男性が多いが、異動先の部署にはパートタイマーや契約社員の女性が多いことも、彼のプライドを傷つける一因になったようだ。

そもそも、この金融機関では、判断を伴わない定型業務は、できるだけ非正規社員に担当させるという流れになりつつある。正社員は、顧客対応及び判断を伴う審査や営業などの業務に従事させる、つまりできるだけ利ざやを稼げる仕事をやらせる方針のようだ。とはいえ、この男性は顧客対応が苦手なので、営業職に就かせる選択肢は、はなから考えられなかったという。

このような経緯を経て異動した男性は、冒頭で紹介したような言葉を吐いて、周囲を見下すようになった。それだけではない。「ただ書類を作るだけの単純作業には喜びもやりがいも感じられないんです。

パートのおばちゃんでもできるような仕事をするためにここに入ったんじゃありません。異動させられて、僕はキャリアをつぶされました」と支店長に訴え、元の融資課に戻してくれるよう直談判したのである。