5  夢を実現できなかったこと

若いころは無限に時間があるように感じられます。望めば何にでもなれるような気がするものです。しかし長じるにつれ、その万能感は少しずつ失われていきます。さまざまな夢があっても、かなえられたものは、ほんの一部でしょう。

これは私の感想ですが、死ぬ前に後悔するのは夢がかなえられなかったことそのものよりも、その夢をかなえるために自分が全力を尽くせなかったことにあるのかもしれません。

ただ、夢を持ち続けていさえすれば、それは最期の瞬間を迎えるまでかなう可能性があります。あきらめたら可能性はゼロになりますが、あきらめなければゼロにはなりません。

ピアノが上手な患者さんがいました。彼女は亡くなる前にピアノを演奏して、病棟の患者さんたちを涙させる演奏をしました。ピアニストになる夢がかつてはあったと聴きました。ピアニストにはなれませんでしたが、ピアノを弾くことで人を元気づけたり感動させたりできたら、という夢を持ち続けたからこその結果だったと思います。

「夢をかなえるためになぜ私は全力を尽くさなかった」終末患者に聞いた「人生の後悔」5選「ふるさとに帰ればよかった…」_6
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夢や情熱がなければ、人間は単に生命を消費するだけの存在と化してしまいます。最期まで夢を持ち続けることができれば、たとえそれがかなわなかったとしても、後悔は少ないのではないでしょうか。


写真/shutterstock

死に方のダンドリ (ポプラ社)
奥真也
死に方のダンドリ (ポプラ社)
2024/3/6
1,100円(税込)
303ページ 
ISBN: 978-4591181386

病気で死ぬか、金が尽きて死ぬか…。それが問題だ。「生きてるだけ難民」急増中!!

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序章  2033年、「お金が尽きて死ぬ時代」に突入する
冨島佑允(クオンツ、データサイエンティスト、多摩大学大学院客員教授)

第1章 「病気で死なない時代」の死に方のダンドリ
奥真也(医師・医学博士。医療未来学者)

第2章 100歳まで生活できるお金を貯めるダンドリ
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第3章 認知症になる前に財産を信託するダンドリ
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第4章 老後に住める家を見つけるダンドリ
太田垣章子(司法書士。OAG司法書士法人代表)

第5章 100歳までボケない「不老脳」をつくるダンドリ
霜田里絵(医師・医学博士。銀座内科・神経内科クリニック院長)

第6章 最期を過ごす場所を決めるダンドリ
中村明澄(緩和医療専門医・在宅医療専門医。医療法人社団澄乃会向日葵クリニック院長)

終章 死ぬときに後悔しないためのダンドリ
大津秀一(緩和医療医。早期緩和ケア大津秀一クリニック院長)

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