3日で納品の衝撃
デザインから生産完了までに14日が標準(最短3日でも可能と言われています)。相当に速いと言われるザラの場合でさえ、最短21日ですから、製品化までのスピードも圧倒的です(図3-3)。
こうしたスピーディな製造プロセスを支えているのが、独自のサプライヤーネットワークです。
300〜400のコアサプライヤー、1000を超える協力サプライヤーで構成されており、車で1時間の範囲内にサプライヤーの工場を集約しています。
納品からサプライヤーへの支払いまでが早いことも特徴で、納品から90日というところが多いなか、同社の場合、30日で支払われます。サプライヤーはシーインから当座の運転資金の借り入れもでき、シーイン以外で同じ製品を販売することも可能です。
現在、中国に2カ所(広州佛山、南沙)、米国に3カ所(アイダホ、オレゴンポートランド、カリフォルニア)、ヨーロッパ(ベルギー)に1カ所、インドに1カ所、それぞれ物流センターを展開し、約220以上の国と地域(2022年3月時点)で販売可能な体制を構築しています。
日本では、2022年東京・原宿にショールーム「SHEIN TOKYO」をオープンしました。ショールーム内では商品の購入はできませんが、展示商品は、商品タグのQRコードを読み込むと、シーインのウェブサイトおよび公式アプリで購入可能です。
アパレル業界は、これまでの原材料の調達、製造プロセス、在庫処理などから、サステナブル対応の遅れが指摘される業界です。それらに対し、同社では、2022年12月5日に、製造工場の労働環境改善のために今後3〜4年で1500万ドルを投資し、4年以内に300カ所の改善プロジェクトを完了させると発表しました。
また、「SHEIN’s Responsible Sourcing」(責任ある調達)プログラムを立ち上げ、国際労働機関(ILO)の条約や各国の法令条例に沿って生産現場の状況を監査する「シーイン行動綱領」を遵守する合意を全サプライヤーと締結。
さらにサプライヤーの事業、従業員教育、労働環境の改善などをサポートする、「SHEIN Supplier Community Empowerment Program」(SCEP)もスタートさせています。
こうしたサステナブルへの対応も、米国上場を目指す同社には、早めにクリアしておきたい課題なのでしょうか。
図/書籍『アマゾン、ヨドバシ、アスクル…… 最先端の物流戦略』より
写真/shutterstock