課題は「地域社会の未来」に向けた議論のあり方
2024年4月2日にはUber Japanがタクシー会社と提携して東京・神奈川・愛知・京都での展開を発表するなど、着々と進んできた日本版ライドシェアの導入。現時点における最大の課題は「地域住民が置いてけぼり」になっている点だ。
日本はいま、少子高齢化、都市への人口集中、高度経済成長期に拡大した都市周辺住宅地における生活環境の低下、そしてバスやトラックドライバー不足など物流における「2024年問題」に直面しており、次世代に向けて大きな社会変革は必須である。
そうした厳しい社会現実の中で、地域交通の抜本的な変革は待ったなしの状況だ。
だからこそ、地方部ではこれまで、同じ方面へ向かう複数の乗客が相乗りする「乗合タクシー」や、スーパーマーケット・薬局・福祉サービス事業者等が自前でマイクロバスを運用するなど、公共交通の代替案を導入してきた。
最新の事例としては、ITを使って乗客の日時・目的地から移動ルートを算出し、効率よく配車する「AIオンデマンドバス」の普及も進んでいるところだ。
さらに、自動運転についても9年半にも及ぶ関係各省庁が連携する国家プロジェクトを経て、国土交通省が全国各地の市町村を支援した社会実装を目指して動き出している。ただし、自動運転は万能な“打ち出の小槌”ではなく、利用できる場所は限定的だと言わざるを得ない。
こうした多様な地域交通を、どのように組み合わせて、また持続的に運用していくかは、地域交通を担う市町村の責務だ。もちろんその中にはライドシェアも含まれるのだが、多くの地域で住民に対する説明が不足していると筆者は感じている。
地域住民は当面、ライドシェアの利便性とリスクについて理解を深めるとともに、その導入が及ぼす地域社会の変化についても考えていくべきだ。
文/桃田健史