下請けにいる企業こそ助けるべき

しかし、「社会保険料の引き下げ」などを主張したとき、「ゾンビ企業を延命させるのか?」「稼げない企業が悪い」といった批判を浴びやすい。その点について、神田氏は公租公課倒産の危機にさらされている中小零細企業の価値を力説する。

「事業者ピラミッドの下のほうにいる企業を、ゾンビ企業や稼げない企業と揶揄されています。しかし、そういった企業こそ現場で小回りの利く仕事を請け負っており、彼らが倒産するとピラミッドの上層部にいる企業は現場で仕事をしてくれる発注先や仕入先がなくなるので、事業が成り立たたずにドミノ倒しのように潰れる可能性が高くなります。社会保険料の引き下げなどを実施すれば、ピラミッドの下にいる事業者が活性化します。ピラミッド崩壊による社会不安が払拭され、安心して過ごせる社会になるでしょう」

従業員、企業ともにメリット十分

神田氏は社会保険料の引き下げ、消費税廃止、ゼロゼロ融資の債務免除などが実施された際は、企業が息を吹き返すだけではなく、労働者の手取り額を大きくアップさせることができると話す。神田氏は自身のクライアントである、従業員数39人のサービス業を展開する中小企業の財務状況を例に出しながら説明する。 

中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)
中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)

 「ゼロゼロ融資の返済に追われながらも利益を出している優秀な企業ですが、それでも5%の賃上げが実施されると赤字になってしまいます。この企業のように黒字経営を続けていても、消費税や社会保険料がネックになり、賃上げしたくてもできない企業は珍しくありません。

中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)
中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)

しかし、社会保険料の引き下げなどが施行された場合は、無理なく賃上げができます。日本では人手不足が深刻化しており、『体力があれば人材獲得、人材流出阻止のために給料を上げたい』と考えている企業は少なくありません」


中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)

中小企業の財務状況の図解(神田氏作成)

しかし、社会保険料の引き下げなどが施行された場合、無理なく賃上げができます。