昭和の多様な変形学生服

1986年から現代にやってきた主人公の小川市郎(阿部サダヲ)は、ひょんなことから世代間ギャップを楽しむ令和のクイズ番組に出演することに。

そこで、令和Z世代チームに「通学中の不良に集団で襲い掛かり、穿いている特殊なズボンを奪うことを『〇〇狩り』と言います。〇〇とは何?」という問題が出題された。

正解は「ボンタン」。昭和世代は「あった、あった!」と膝を打ったことと思うが、若い視聴者の多くはピンとこなかっただろう。

本作では市郎の娘の純子(河合優実)が「スケバン」ルックなセーラー服を、昭和へタイムスリップして不良ファッションに目覚めた向坂キヨシ(坂元愛登)が短ラン&ボンタンを着用していたりと、学ランをカスタマイズした当時の“変形学生服”の描写が散見される。

しかし、学校制服の製造販売を行うカンコー学生服が「世代別の中学校の制服タイプ」についてインターネット調査したところによると、詰襟(学ラン)を着た経験については、60代が99%なのに対し、20代は63%と激減。

特に昨今はブレザーが台頭しており、もはや変形学生服を見たことがない世代も多い。

いったい当時の変形制服カルチャーはどのようなものだったのか。伝説のヤンキー漫画『カメレオン』の舞台にもなった千葉県松戸駅前の喫煙所にいた51歳の男性は、当時をなつかしむようにこう証言してくれた。


松戸駅(※写真はイメージです)

松戸駅(※写真はイメージです)

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「短ランの他にも、“セミ短”や“中ラン”、“長ラン”と徐々に丈が長くなって、丈がくるぶしまである“洋ラン”ってのもありました。


ワタリ(モモ幅)が太いんだけど裾がキュッと締まっている学生ズボンをボンタンと呼びますが、そのなかでも膝下から膨らんで細くなる“バナナボンタン”や、膝下から裾がスリムになっている“ボンスリ”、ワタリから裾までストレートな極太シルエットの“ドカン”などいろいろありましたね。


俺は短ランにボンタンの組み合わせがお気に入りで、キヨシと同じようにインナーは赤Tだった。そういえば靴下もよく赤を履いてたなー」

そうした変形制服の調達はなかなか大変だったと男性が続ける。

「当時はネットなんてないから『チャンプロード』って暴走族向け雑誌の広告ページからハガキや電話で注文してました。

『ベンクーガー』とか『ジョニーケイ』とか変形学生服メーカーがいくつもあって、一度買うとメーカーからカタログが届くようになるんです。それを見てるだけで心躍ったよね」