世界の各国から発せられた反戦スピリットあふれる3曲

『Vietnam』Jimmy Cliff

1960年代初頭から音楽活動を続けるジャマイカのレゲエシンガー、ジミー・クリフ。1969年にリリースしたこの曲は、トロピカルでのどかな雰囲気が漂うようにも聞こえるが、ベトナムの戦地に行っていた友人が帰らぬ人になったということを歌う反戦歌。「誰かお願いだから、戦争を今すぐ止めてくれ」という歌詞から、当時の悲痛な状況がひしひしと伝わってくる。

『99 Luftballons』NENA

MTV全盛期の1983年に世界的大ヒットを記録した、ドイツの歌姫、ネーナ率いる同名バンドによるナンバーで、日本では『ロックバルーンは99』という邦題で知られる。僕も含めた大多数の日本人にとって歌詞の意味を解するのが難しいドイツ語の曲であるとともに、ネーナの魅力的なルックスも手伝って、アイドルポップスのようにも扱われたが、実は当時まだ東西に分断されていたドイツにおいて戦争の愚かさを歌った反戦歌だった。

『One Day』The Rebel Riot

2007年に結成されたミャンマーのパンクバンド、ザ・レベル・ライオット。ミャンマーは2015年にアウン・サン・スーチー率いる国民民主連盟が勝利し、民主化の道を進みはじめたのも束の間、2021年にクーデターによって国軍が政権を奪取し、市民に対する弾圧を開始した。そんな中でもザ・レベル・ライオットは、当局の目をかいくぐりながら命がけで活動を続けている。2021年発表のこの曲は、本稿のタイトル「歴史に埋もれた~」とは異なり、現在進行形の問題に対して、「人々よ目を覚ませ! 体制から抜け出せ!」と呼びかけている。


以上、アラフィフパンクおじさんが独断と思い入れのみを頼りに、夜を徹して選んだ21曲である。

この地上に起こりうる最悪の悲劇のひとつである戦争に対して、時代や国を問わず、いかに多くのアーティストが声を上げてきたかがわかるだろう。
そのメッセージは人々にしっかり届き、心を動かしてきたはずだ。
それなのになぜ、悲劇はまた繰り返されるのか……。
我々がいま直接的にできる行動は少ないが、こうした歌を聴いて「反戦」のスピリットを胸に刻みつけることも大切なのかもしれない。