世界の各地で起こる悲劇や矛盾をついた初期パンクの3曲

『Tommy Gun』The Clash

ロンドンパンクの代表格バンド、ザ・クラッシュが1978年にリリースした楽曲。反ファシズムの姿勢を明確に打ち出していたバンドのフロントマン、ジョー・ストラマー作詞作曲によるこの曲は、英雄気取りのテロリストを皮肉る内容。当時のジョーは、アイルランドのIRA、パレスチナのPLO、イタリアの赤い旅団、ドイツのドイツ赤軍などの組織による活動を注視していたという。

『Nagasaki Nightmare』Crass

1977年から1984年にかけて活動し、戦争や核兵器、キリスト教、物質主義、商業主義、動物虐待、性差別、環境破壊などに反発する、強固なメッセージを発し続けたイギリスのパンクバンド、Crass。アナーキズムの思想に基づき、自給自足の集団生活をしながらアート活動を繰り広げた彼らが1981年に発表したこの曲は、原爆を投下された長崎の悪夢を題材にしている。

『People Have The Power』Patti Smith

“NYパンクの女王”と呼ばれたパティ・スミスは、1970年代にロックスターとなったのち、子育てに専念するため長くアーティスト活動から離れていた。1988年、夫であるMC5の元ギタリスト、フレッド・スミスとの共作で9年ぶりに発表したこの曲は、「人々には世界を愚者から取り戻す力がある」と高らかに歌い上げ、反戦と民主主義のアンセムとなった。

個性豊かなポストパンクバンドのアバンギャルドな反戦歌3曲

『War Dance』Killing Joke

1978年に結成されたイギリスのポストパンクバンド、キリング・ジョークは、実験的要素を取り入れて進化し続けたインダストリアルロックの代表格。1980年発表のファーストアルバム「KILLING JOKE」に収録されているこの曲は、米ソの冷戦状態が極まり、核戦争の危機も取り沙汰されていた当時の世界の、ピリピリとした空気感が表現されている。

『The War Song』Culture Club

ニューロマンティックの代表格として、デュラン・デュランと並び称されるイギリスのバンド・カルチャークラブは、ボーカルのボーイ・ジョージの艶やかな姿も話題をさらい、日本でも人気者となった。1984年に発表されたこの反戦歌は、日本びいきだったボーイの意向により、曲の最後のほうで突然「センソーハンターイ」という日本語が発せられるのでお聴き逃しなく。

『Two Tribes』Frankie Goes To Hollywood

1980年代半ばに彗星のごとく現れ、次々と世界的ヒットを放ったイギリスのニューウェーブバンド、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドが1984年にリリースしたセカンドシングル曲で、当時の米ソ冷戦を題材にしたシニカルな反戦歌。レーガン大統領とチェルネンコ書記長のそっくりさんがリングで粉だらけになって戦う、あまりにアホくさいPVも大きな話題となった。