「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化_h

高齢化社会、コロナ禍で街に増える元飼い猫

環境省の統計によると、同会が発足した2001年度の猫の殺処分数は、全国で約27万匹だった。その後、ボランティアによる保護猫活動や、地域猫の不妊去勢手術が広がり、2020年度には2万匹以下にまで減少。千代田区では、「ちよだニャンとなる会」の活動などにより、2011年以降猫の殺処分ゼロを継続している。

しかし、新たな課題もある。古川さんは「殺処分となるのはこれまでは街中で繁殖した子猫が多かったのが、近年では元飼い猫が増えています。これは、人間の社会問題、特に高齢化と深くひもづいています」と指摘する。

ペットフードの高品質化や獣医療の進化もあり、20歳まで生きる猫も珍しくない。そのため、一人暮らしの高齢者が猫を残したまま亡くなってしまい、遺族が飼えずに保健所に持ち込んだり外に放してしまったりするケースは特に増えている。また、捨て猫を拾ってきて自宅で飼い始めるも交配で猫が増えてしまい、飼い主が入院したり亡くなったりしてしまって「多頭飼育崩壊」に陥るケースもある。同会が保護したケースでは、多数の猫を抱えたまま飼育崩壊を起こし、死んだ猫が冷蔵庫に入れられていたなど目を覆いたくなるひどい状態もあった。

また、コロナ禍で在宅時間が増え「生活の癒やしに」とペットを買う人も増えたが、面倒を見切れずに飼育放棄となってしまう課題も顕在化しつつある。

「他の地域では、純血種が捨てられているという話を耳にしています。保護猫の譲渡の際には、普段の生活などを伺った上で譲渡しますが、ペットショップは何の審査もありません。コロナが収束した後に、さらに飼育放棄される猫たちが増えないことを願うばかりです」

「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化_i
「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化_j
「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化_k

ちよだニャンとなるcafé 神田神保町
住所:東京都千代田区神田神保町2-38-10多幸ビル4階
電話:070-8957-5840
営業日時、料金など詳細はこちら>>

取材・文/堤 美佳子
撮影/岡庭璃子