「純血種の猫も捨てられている」飼育放棄の背景にあるコロナ、高齢化社会、カワイイ文化_e

譲渡が進まない背景に日本の「カワイイ文化」

同会では、毎年100匹以上の猫を保護。譲渡会では、子猫から里親が決まっていくため、成猫はなかなか決まりにくい。「カフェへの来店をきっかけに、猫と関係性を深めて『この子だったらうちの子になってもいいな』と譲渡が進められる場になれば」と古川さんは語る。カフェのオープン後、約4カ月で8歳と2歳の猫の譲渡が決まった。現在、カフェで暮らしている猫は8匹。そのうち、ステラ(雌、15歳)は、神田エリアで地域猫として15年暮らしていたが、高齢のため保護された猫だ。

成猫の里親が決まりにくい理由のひとつに、古川さんは「日本人に根づいている『カワイイ文化』が背景にあるのでは」と指摘する。「日本人は、小さくて可愛らしいものが好きですよね。だからこそ、猫も子猫が大人気で一番にもらわれていく。一方で欧米諸国では、『大人はキャラクターが立っているから』と、成猫も子猫も同じくらい可愛いと思われているので人気に差はないのです。日本は、時間をかけてでも文化レベルの底上げをして成熟していかない限り、成猫の譲渡は進まないでしょうし、根本的な解決にはつながらないと思います」

また、白黒猫で顔の斑が左右対称できれいに分かれているハチワレのほうが譲渡は進みやすく、個性的な柄の猫はもらい手が見つかりにくかった。しかし、あることがきっかけでさまざまな白黒猫の譲渡が進むようになったという。それは、Suicaのペンギンや千葉県のチーバくんのキャラクターデザインを生み出し、『ちよだニャンとなるcafé』のロゴも手掛けているイラストレーター・絵本作家のさかざきちはるさんの影響だ。古川さんが説明する。

「さかざきさんは、白黒猫の魅力を楽しめるウェブサイト『白黒さんいらっしゃい』で、いろいろな柄の猫のイラストを描かれています。左右対称ではない変わった柄でも個性的で可愛いという風潮ができたからこそ、今では、そのような白黒猫からもらわれていくようになりました。さかざきさんご本人は無意識だったと思いますが、結果的にたくさんの白黒猫が救われました」

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