保釈をめぐる日本と外国の司法制度の違い
潜伏先の離島から尾道水道を泳いで渡り、広島(本州)に上陸した野宮を指名手配犯だと見抜いたのは、ネットカフェのベテラン店員。店員はどうして、偽名を使って入店した野宮を怪しいと睨めたのか。北海道から広島、四国までひたすら足で稼ぎ、次から次へと繰り出される「事実は、小説より奇なり」のディテールは、まるで漫才のようだ。引き笑いから噴き出し笑い、苦笑、失笑のうちに読み進めると、終章では比較刑事法を専門にする王雲海教授(一橋大学大学院)を訪ねて、保釈をめぐる日本と外国の違いについてクールな解説を決める。
「まずはシンプルに、かつて日本を騒がせた逃走犯たちがどんな思いで過ごしていたか、何を食べていたか、どうやって捕まったのか。そういう、おもしろ情報を楽しんでもらえれば嬉しいです」
だがもちろん、書かれているのはトリビアだけではない。
「レバノンに逃げたカルロス・ゴーン元会長が、自分の味方を増やすために世界に向けてアピールしたせいもあって、最近は、諸外国から日本に対して『人質司法』という厳しい声も上がっています。
けれど、それは必ずしも米国や欧州の司法制度だけが正しくて、日本の司法制度が間違っているという意味ではありません。良し悪しの両面を含んだものなのではないでしょうか。そのあたりも、王教授や弁護士の先生方に色々と伺っています」
硬軟おりまぜた充実の内容、新書に巻かれた帯のフレーズにも納得である。
どうりで捕まらないわけだ!
取材・文/山田傘
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