声優を志した友人の“とある”一言と、親からの反対【キッカケ】
子どもの頃、多くの人が通るであろう『ちびまる子ちゃん』や『ポケットモンスター』などの国民的アニメに幼少期から触れていた奥野。
中でも大好きだったと話すのは『美少女戦士セーラームーン』。遊んでいたおもちゃも、使っていた枕も、言葉を覚えたのも(※『セーラームーン』あいうえおパソコン)『セーラームーン』だったそうだ。
しかし、この時はまだ“声優”という職業を意識していなかった。
キッカケとなったのは、高校時代に出会った“オタ”という愛称のアニメ好きなクラスメイト。仲を深めていく中で、“オタ”は声優・平野綾を推していると教えてくれた。そして、奥野の声について、“オタ”はこう述べたのだ。
「香耶は声優さんみたいな声だね」と。
当時のことを、奥野は次のように振り返る。
「友達の好きな人って、どんな人なんだろう?と興味が湧いて調べてみたら、平野綾さんが『涼宮ハルヒの憂鬱』で涼宮ハルヒ役を演じている声優さんだと知りました。
さらに“声優さんみたいな声”と言われたものだから、家で声真似をしてみたんですよ(笑)。そしたら、普段の自分とは違った声を出せて“あれ? 私ってこういう声が出せるんだ!”って驚いたんです。
子どもの頃から引っ込み思案で、何をするにも自信がない、得意なことが何か分からなかったけど、“声”が自分の特技になり得るんじゃないかって思えた出来事でした」
そこから奥野は、友人の影響で幅広いアニメ作品に傾倒していった。その中で特に惹かれたのが『新世紀エヴァンゲリオン』の葛城ミサトを演じる三石琴乃さんの演技。
奇しくも大好きだった『セーラームーン』の声を演じていたのも三石だったと知った当時のことを振り返り、「記憶をたどれば、原点は三石さんだったのかもしれません」とはにかみながら話した。
これらの出来事を“キッカケ”に声優の道を志したいと思うようになった奥野は、高校卒業後の進路を決めるタイミングで「声優になるための専門学校へ行きたい」と親に相談する。
ところが、返ってきた答えは「NO」。それは我が子を案ずる親心ゆえの反対だった。
「専門学校に行ったとしても事務所に入れるかも分からない。事務所に入ったとしても、お仕事がもらえるかも分からない。私は家でも大人しい性格だったから、そんな厳しい世界に入ることを心配した上での反対だったんだと思います。それで専門学校は諦めて、四年制大学への進学を決めました」
しかし、高校最後の年、学校の恒例行事で放送部として役割を任された奥野の姿を見て母親は驚くことになった。
「私が普段話しているときの声とは違う声を聞いた母がすごくビックリしたみたいで“香耶ってあんな声が出せるんだね。それはあなたにしかない特技だから、今なら声優になりたいって言ったことが理解できる”と言ってくれたんです。
その言葉が、声優になるのを諦めなかった理由のひとつになりました」と振り返る。