苦戦したオーディション…声優デビューの切符を掴んだ『Wake Up, Girls!』【始まり】

大学へ進学するため地元・岩手県から上京した奥野。

そのころの声優界といえば、放課後ティータイムやスフィアなどの声優ユニットの結成が相次いでいた。

芝居だけではなく、楽器を持ったり、歌ったり、踊ったりーーそんな声優たちの姿を見て「声優って、何にでもなれるんだ!」と奥野は“声優”という職業により魅力を感じていった。そして、大学に通いながら声優のオーディションを受け始めるようになる。

最初に受けたのはゲーム『探偵オペラ ミルキィホームズ』のオーディション。悔しくも二次審査で落選したこのオーディションで選ばれたのは同い年で同郷(岩手県)出身の佐々木未来だった。

この事実を奥野はネガティブに捉えなかった。佐々木との共通点が「自分も声優になれるかも」と大きく確信づけたという。

念願の“ツンデレ”キャラに配役されるも声で演ずる難しさに直面…声優・奥野香耶を変えた3つの原点_g

そして2回目に挑んだのが、2012年に大手レコード会社エイベックスと声優事務所81プロデュースが開催したアニソン・ヴォーカルオーディションだ。後に奥野がメンバー入りを果たすWake Up, Girls!の先輩グループ i☆Risのメンバーを決めるオーディションだった。

残念ながら、ここでも選考に進むことはなかった奥野。しかし、このオーディションを受けたことがキッカケで翌年開催した第2回アニソン・ヴォーカルオーディションにも挑戦。そこで見事、声優デビューの切符を掴んだ。

これが声優としての【始まり】の原点だ。

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念願の“ツンデレ”キャラに配役されるも声で演ずる難しさに直面…声優・奥野香耶を変えた3つの原点_i

念願の声優になった奥野だが、全てが想像通りとは行かなかった。

Wake Up, Girls!は当初、二次元のキャラクターと三次元のキャストを重ねる“ハイパーリンク”をスローガンに掲げた声優ユニットだった。

奥野が演じた菊間夏夜は、大人っぽくクールな性格でメンバーの中でもお姉さん的な存在。また、奥野はメンバーの中で最年長。この立ち位置に「最初はすごく戸惑った」と打ち明けた。

「私には兄と姉がいたし、身長が小さかったこともあって、人生であまりお姉さんとしての立場を経験したことがありませんでした。だけどWake Up, Girls!になってからは、お姉さん扱いをされることが増えて。それが嫌でちょっと抵抗してみたこともありました」

キャラクターと自分に乖離を感じていた奥野。さらに、「自分に合うと思っていた声とは全く違う声を演じることへの違和感も拭えなかったんです」と話す。

「声優になる前は自分の声質を生かしたキャラクターを演じてみたいと思っていました。ツンデレっぽいキャラクターが合っているな、演じてみたいなって。

だけど、夏夜は低めの大人っぽい声だったんです。そっちの声が評価されて、すごく嬉しい反面、複雑な気持ちにもなっていました」

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しかし、見出された新しい自分を受け入れさせてくれたのもまたWake Up, Girls!だった。2017年に上演された舞台『Wake Up, Girls! 青葉の記録』で同役を務めたとき、奥野は演じることの楽しさにようやく気付くことができたという。

「アニメの絵を通さず、自分自身のまま夏夜を演じることになった時“私は夏夜じゃないんだ!”ってようやく気づきました。ハイパーリンクだけど、“私と夏夜は違う人間で私は私!”って思っていたはずなのに、無意識のうちに夏夜のようにならないと……と思っていたなって。

そこから抜け出せたことで、夏夜を演じる自分を受け入れることができたんです」

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