大相撲で大成する力士の共通点
「プロ志望の子供を指導するとき、私が一番に考えることがケガをさせてはいけないということです。プロとして大成させるために中学時代は体づくりです。そこから高校に進んだときの生徒それぞれの指導をどうするかを考えます。高校3年間といいますけど、実際は3年生の最後の大会までは2年半とすごく短いんです。一度、けがをしてしまったらすべて棒に振ることになります。ですから、まずはケガをさせないことが一番です」
そのため土俵上での申し合いは、番数を少なく制限している。代わりに重視しているのが徹底した体作りだ。しこ、すり足といった基礎練習はもちろん、専属トレーナーの指導のもと、相撲に必要な筋力を徹底して鍛え上げる肉体トレーニングに練習の大半を割く。
「私は試合に勝つ稽古をまったくさせません。プロになりたいなら高校時代に焦ることはないからです。それよりも基礎体力を培うことが基本です。プロになりたいという子どもが中学から高校時代に一番やらなくてはならないことは、ケガをしないための強い体を作ることなんです。このベースを作ってあげることが私の役割だと思っています」
高校野球では、甲子園の全国大会での過剰な投球数による高校生の身体的負担が問題となり2000年から延長18回が15回となり、2018年からはタイブレーク方式となった。こうした学生の身体のケアを山田監督は、高校野球に先がけて取り組んできた。トレーナーと共に部員のケガをケアするための治療院との連携を結ぶなど、生徒個々の将来を見据え、基礎体力と肉体の礎を作る。この徹底した土台作りが多くの関取を輩出してきた所以なのだ。
山田監督は最後に「夢」について言及した。
「琴ノ若と貴景勝の2人に横綱になってほしいですね。琴ノ若は、今の相撲を続ければ上がると思います。貴景勝も筋力が大関昇進した当時まで戻れば負けないと思います。2人の横綱誕生が今の夢です」
21世紀初の日本出身横綱となった稀勢の里(現・二所ノ関)以来の日本出身横綱の誕生……山田監督の「夢」は、そう遠くない未来に叶いそうだ。
取材・文/中井浩一