海外で「土着化」する創価学会
本村 創価学会は世界宗教を目指してテキストを確定させているとのことでしたが、ほかにも宗教が世界に広がるために必要な条件はあると思いますか。
佐藤 外国に展開すれば世界宗教と呼べるかというと、そうではないと思うんですよ。たとえばアメリカには浄土真宗のお寺がいくつもありますが、これは基本的に日本から移民した人たちのためのものですから、世界宗教化したとは言えないでしょう。
したがって、世界宗教と呼べる存在になるには、それぞれの場所で土着化する必要があります。創価学会も、根っこは日本にあるけれど、外国では日本的なものから離れて土着化させているんです。
本村 アメリカならアメリカ的な創価学会になっていくということですか。
佐藤 そういうことです。たとえばインドネシアなら、ムスリム(イスラム教徒)はやめることができないので、ムスリムでありながら創価学会員でもあるという形を認めないと布教できません。ユダヤ教も基本的にやめられないから、ユダヤ教徒のまま創価学会員になってもらうわけです。
本村 そういう柔軟性がないと世界宗教にはなれないということですね。
佐藤 私はそう考えます。それがいいとか悪いとか言っていられませんから。ちなみにインドでは、底辺の教団ではなく、カースト制度の頂点にあるバラモンからどんどん布教しています。イタリアでは、カトリックを集中的に転宗させているんですよ。
本村 カトリックから創価学会に?したたかにやっているんですね。
佐藤 日本国内ではあまり知られていませんけれどね。2023年1月に、池田大作の名前でウクライナ停戦の声明文が出されました。
その中では、「ロシアは侵略国」とは一切言っていません。理由は単純で、創価学会のメンバーはロシアにもいるからです。もちろん、ウクライナにもいる。本当に世界宗教化していると、戦争当事国のどちらにも加担できないんですよ。
その意味では、ロシア正教もカトリックも「本当に世界宗教なのか?」と言いたくなります。ロシア正教は「これは聖戦だ」と言うわけだし、カトリックもウクライナのアゾフ連隊を応援して一方に肩入れしていますからね。ある意味では、創価学会のほうがよほど世界宗教らしい振る舞いをしているんです。
ただしキリスト教にはこういうときに便利な「目に見えない教会」という概念があるんですよ。キリスト教徒は、目に見える教会のメンバーであるのとは別に、イエス・キリストを頭とする目に見えない教会のメンバーだというわけです。だから、世界宗教としてのキリスト教は目に見えないところにしか存在しない、という話になっちゃう。
本村 僕なんか、ひたすら「南無阿弥陀仏」と唱えさえすれば許される浄土真宗みたいな宗教こそ、世界宗教になりやすいんじゃないかと単純に思ってしまうけれど、そういうものではないんですね。
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