プロデュースをして俳優としての原点に戻れた
──確かに虎永は将軍という権力の座を心から手にしたかったわけではないですよね。むしろやりたくないけれど平和の世をもたらすための手段として、それが必要だったという。
僕にとっては、いい作品にすることがすべて。その辺も含めてオーバーラップしていたので、現場で一俳優としてカメラの前に立つときは、もう無の境地といいますか。ただそこに役としていて、呼吸をして、リアクト(反応)していく。自分が配置したプロたちが全部チェックしてくれる安心感のもとに、自由を感じながら役に集中できたことは、この上ない喜びでした。ご褒美みたいな感じでしたね。
プロデューサーとしての活動よりも演じる時間のほうが圧倒的に短いのですが、だからこそ演じるときの貴重さをいつも以上に感じました。プロデューサーをやったからこそ、俳優としての本来あるべき原点に戻れたのかもしれないなという気がしています。
──この作品は日本文化を正しく伝えることに徹底して取り組むことによって、ドラマの内容はもちろん、『SHOGUN 将軍』というプロジェクトそのものもまた、ほかの文化をリスペクトすることの精神を伝えていると思います。そのことには本当に感動を覚えます。
メイキング・オブ・『SHOGUN 将軍』そのものが、ひとつのドラマなんですね。洋の東西の壁を乗り越えて、文化も言葉も宗教も違う者同士が集まり、協力して学び合い、尊敬し合い、尊重し合い、ひとつのものを作り上げる。そして、このような作品ができるのだということ自体が、大きなメッセージになっていると思います。
力を合わせれば奇跡が起こるんだというポジティブなメッセージを、見てくださった方がすくい取ってくれたらいいなと心から思いますね。
世界各地で戦争や紛争があって、異なる他者との対立が深まっているこの時代に、作品を見終わった視聴者のみなさんが希望を抱いていただけたなら。そして、虎永のような不屈の精神で困難を乗り切っていくためのエネルギーになってくれることを願っています。手塩にかけたこの子(『SHOGUN 将軍』)を、よろしくお願いします。