宇宙を統括
聖武天皇の願いは叶ったのでしょう。東大寺の大仏を通じてこの国の人の平和を祈る心は、今日までも伝播し続けているように思います。近年の新型コロナウイルスの流行による混乱の際も、東大寺は日本中の宗派・宗教を超え、僧侶や神父とともに祈りを捧げると宣言しました。
聖武天皇は「ほら!大仏を造ってよかったでしょ!」なんて言っているかもしれません。だからこの国に生きる、私たちみんなの「大ボス」なんですね。
さて、ではなぜあんなに大きいのでしょうか。先ほどしれっと書きましたが、この宇宙を統括する超巨大な存在だからです。超巨大にして、〝宇宙を統括する〟というスゴすぎて分かりにくい働きを「考えるな、感じろ!」と示してくれているわけです。
期待通り、私はあの大きくて圧倒的な存在を前にしては息を吞み、「よく分からないけど、デカくてありがたい!」となります。現代は巨大建造物も珍しくないけれど、やはりこの国を1300年もの間背負ってきた〝デカさ〟にはひれ伏したくなる、ウチらのボスです。
ボス(もう敬意を込めてこう呼ばせていただきます)のポーズには、メッセージが込められています。右手のひらを前に向けて立てる「施無畏印」、左手のひらを上に向けて膝に乗せる「与願印」。右手で「怖くないですよ」、左手で「願いを叶えましょう」という意味を示します。
私流に解釈すると「恐れることはない、私があなたの全てを受け止めよう!どこからでもかかってきなさい!」となります。ボス〜!心強すぎます〜!
先にも書いた通り、大仏は何度も壊れたり再建されたりを繰り返したので、奈良時代の造立当時のものはお腹回りと、台座の蓮の花弁くらいしか残っていません。腰回りは鎌倉時代、ボディやお顔は江戸時代のものです。ここまで読んでいただいた方なら「なんだ、江戸時代かよ」とはならないですよね。
再建されていることが尊いと思うんです。やはり大ボスだからこそ、時代の動乱には巻き込まれるし、造り直すのも莫大な費用がかかります。それでもなお立ち直ってきていることを思うと、ありがたく感じますよね。
ただ、聖武天皇が今の姿を見たら、「だいぶ若返りましたなぁ!」なんて言うかもしれません。
イラスト/書籍『みほとけの推しほとけ』より
写真/shutterstock













