生産数を増やせない高級時計と
生産数を増やせるスニーカー

「ロレックス」や「パテックフィリップ」のような高級時計も需要が供給を上回っている商材の例ですが、質を落とさずに生産量を増やすためには技術者の育成などが必要になり、そう簡単に生産数を増やすことはできません。しかし、もともと大量生産品であるスニーカーなら、工場さえ確保できれば生産規模の拡大を比較的簡単におこなうことが可能です。

しかし前述したように、手に入らないからこそ誰もが欲しがっているというのがスニーカーブームの本質。今までは何回抽選しても当選しないのが当たり前だったのに、2020年に入ってからは抽選に参加すれば当選するという例が増えてきました。

それは、欲しい人たちがスニーカーを手に入れられるようにしてきたメーカーの努力のおかげでもあり、利潤を追い求める資本主義社会における宿命でもあります。

ただし、スニーカー業界においては生産数が増えれば増えるほど、消費者は熱狂しなくなるというジレンマを抱えています。事実、生産数が急速に増えていき、抽選に参加すれば当選するケースが増えていった2020年頃からは、消費者も「実は誰でも買えるんじゃないか」と薄々気づきはじめ、熱が冷めつつあったように思います。

逆に言えば「レアだから欲しい」「ブームが盛り上がるにつれて生産量が増えた」という事実を理解していれば、スニーカーブームが終わった現在においても、これからプレ値が付くであろうモデルの予測ができます。

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それはブーム初期の生産量が少ないモデルです。特に熱狂が冷めた今となっては転売のために保管していたスニーカーが安く売り出されていきます。そうなると普段履きとして消費されて、どんどんと数が少なくなっていく。

ただしブーム後半の頃に高額で購入したモデルは損切りできずに死蔵されるうえに生産数自体が多いため、なかなか値が上がりにくく、加水分解するまでの間に持ち直す可能性は低いでしょう。しかし、初期の頃であれば生産量が少ないため、これから何年か経ったあとにふたたびプレ値がつく可能性がある、と言えるでしょう。

具体的には2017年以前のモデルならば、まだ生産数がそれほど多くないこともあって、これから履き潰されていったときにハイプする可能性があります。あるいは発売当時は不人気で定価割れしていたようなモデルも今後は履かれてなくなってしまうため、将来的に脚光を浴びる可能性があるでしょう。