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初の首脳会談へ「日本に行く気ない」隠した本心

日朝首脳会談が行われる半年前の2002年3月、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」に、日本人行方不明者を調査する用意があるとの記事が掲載された。蓮池薫さんは北朝鮮でこの記事を読み、「これは何か動きがあるかもしれない」と感じたという。

5月中旬になり、薫さんと地村保志さんが北朝鮮当局者から呼び出された。拉致問題について、2人が存在しているという事実を日本側に明らかにすると告げられ、「現在、そのための交渉を実務レベルで行っているところだ」と明かされた。さらに、保志さんは「拉致問題の解決についてどう考えるか。2人だけを出せば解決するか」と問われ、「それでは全くだめだ」と答えた。

薫さんは「拉致問題の解決についてどう思うか」とも聞かれた。言葉を慎重に選びながら答えた。「日本に行く気はない。ただ、拉致問題をきれいに解決しようとするのであれば、結局は自分たちを日本に帰国させるしかないのではないか」

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小泉純一郎と金正日による日朝首脳会談 写真/Getty Images
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実際にはそんな話はないのに、忠誠心を試すために指導員がカマをかけてきたのかもしれない。帰国したいという本心をさらけ出すことで、不満分子とみなされ、自分自身だけでなく家族にも不利益が生じるのではないか。そんな恐れを瞬時に感じ、このように答えたという。

日本に帰っても、北朝鮮のスパイではないかというレッテルを貼られ、両親や兄に迷惑をかけるのではないかという心配もあった。北朝鮮で生まれた子供たちへの影響も考えた。ただ、日本にいる家族には、自分が生存している事実を知らせたかった。首脳会談までの数カ月間、毎日のように悩み続けた心労から、体重はかなり減ったという。

帰国後、日本政府の聞き取り調査に「もし自分が帰国に対して積極的な態度を示していれば、今回の帰国はなかっただろう」と答えている。薫さんの直感が正しければ、同じようなチェックを受け、帰国できなかった人がいる可能性も考えられる。