志尊淳が寂しさを感じるときとは
――母親に依存されて、義父の介護に明け暮れ、ギリギリの精神状態で生きていた貴瑚をアンさんは救いますが、アンさんと貴瑚と友達の美晴(小野花梨)は仲がよく、人生の厳しい側面を描いている本作の中でも、ほんわかしたシーンもありました。
3人のシーンは、ふだんの3人の雰囲気と繋がっていたほうがいいと思ったので、いい関係性を作ろうと思いました。僕は小野花梨ちゃんにずっといじられていましたね(笑)。杉咲花ちゃんとはまさにアンさんと貴瑚みたいな関係でした。だから本番でもいい空気が作れたと思います。
――「52ヘルツのクジラの鳴き声はあまりにも高音で他のクジラたちには聴こえない。だから世界で一番孤独なクジラと言われているんだ」というセリフがありますが、志尊さんが孤独を感じるのはどんなときですか?
孤独は感じないけど、寂しいなと思うのは、休みの日。朝起きてから誰からも連絡が来なくて、ずっと1人で家にいるとき。ちょっと寂しいですね(笑)。
でもだからといって、自分から連絡をとってアクションを起こしたりせず、「今日は家でゆっくり過ごす日」と思って家から出ない。ひとりで過ごす時間が好きなんです。
――出不精なんですか?
前は家にずっといるタイプじゃなかったんですけどね。今は、外出するとすぐ家に帰りたくなります。
――人が多くて外にいるのが嫌とか?
そういうのでもなくて。外出のために着替えて外にいると疲れちゃうんですよ(笑)。友達と一緒のときは別ですが、ひとりで外出とかあまりないですね。食事も行きつけの店に行ってパパッと食べて帰るとか、ふだんはそういう感じなんです。
病気の克服、独立を経て、大切にしていること
――ここ数年、コロナ禍で映画制作がストップするなど、俳優たちの仕事環境に影響を与えました。志尊さん自身も取り巻く環境に変化があったと思うのですが、仕事への向き合い方や気持ちに大きな変化はありましたか?
ガラリと変わりましたね。僕自身、急性心筋炎になって入院したり、12年間お世話になった事務所から独立したりしましたから(2023年ワタナベエンターテインメントから独立)。とはいえ、一つひとつの仕事に全力で向き合うことに変わりありません。
ただ、仕事に対する考え方や自分のプライオリティーを大事にしながら決めていくことなど、仕事へのスタンスには変化がありました。自分の人生なので後悔したくないし、責任を持ってやっていきたいです。
――さまざまな経験を経て、変わっていったんですね。
少ない経験ですけど。もう少し自分を大切にしていこうとも思うようになりました。それは健康面だけでなく、精神的な面も含めて。今の自分を認めてあげた上で、やりたいことに挑戦していきたい。
――具体的にはどのような挑戦でしょうか?
俳優だから、こういうことはしなくていいというような括りはやめて、やりたいことをやろうと思います。ファンクラブサイトを作って、イベントなども最初から自分も関わってやっています。
仕事はチームで動いていますが、最終的に決断するのは自分なので、そこが今までとは違いますし、俳優活動をメインにしつつ、いろいろな活動をやっていきたいですね。