ホストが抱える売掛金のリスク
昨年、世間を大いに騒がせたが、ホスト業界では「売掛金」が問題視されている。いわゆる「ツケ」であり、飲み代をまとめて後払いするシステムである。
例えば、ある顧客がホストクラブで数回にわたってサービスを受け、その都度支払いをせず、一定期間後にまとめて請求されるケースがこれに当たる。ホストクラブにとっては「債権」となり、法的に代金受け取りの権利を保有することになる。
この売掛金のシステムは、これまでしばしば問題を引き起こしてきた。ホストクラブは顧客、特に支払い能力に疑問がある若い女性に対して、高額な売掛金を抱えさせることがあるからだ。その顧客が支払い不能になった場合、悪質なホストクラブでは、女性に闇金融や風俗店を紹介して返済をうながすことがある。
そもそも、売掛金は税務的にどのように扱われるのか? 税理士法人松本の見解は以下のとおり。
「基本的には所得の計算においても、消費税の計算においても、現金売上か売掛金かは関係なく、一律に税金が課せられます。
問題は売掛をした際の代金がその顧客から回収できなかった場合です。貸倒損失として経費にでき、消費税を差し引くこともできますが、この立証がなかなか簡単ではありません。
一般的には1年基準(ワンイヤー・ルール)により経費にできますが、通常は経費に落とす前に申告期限が到来します。そのため、お店やホストは代金を回収できていない売上に対し、先行して税金が課されます。
お店やホスト自身も資金ショートを起こすことが多く、彼らにとっても売掛金を回収できないことは死活問題となるため、この問題はさらに複雑化しています」
ホストの中には、まだ入金されていない売掛金も売上としてカウントし、SNSなどで「売上1000万円!」などとアピールする者もいる。売掛金が回収不能となるリスクがありつつも、若いホストたちはそれでも見た目の数字にこだわってしまうのだ。
ホストクラブにおける売掛金のシステムは、顧客だけでなくホストをも、経済的、心理的に脅迫する可能性がある。現在、ホスト業界の自主規制という自助努力で変わりつつあり、実際に売掛金廃止を掲げるホストクラブも出てきたが、このシステムが完全に撤廃されるかどうかはまだわからない。
税務当局も、昨今の世間の注目を鑑みて、ホスト業界の申告内容に注目している可能性が高い。今年から厳しい目が向けられるならば、正確な経費計上、的確な売掛金管理がより一層、重要になるだろう。
取材・文/丸山ゴンザレス 取材協力/税理士法人松本