「まったく効果がなかったと思いますね」

実際に申請し、助成金の交付を受けた町会はこれについてどう受け止めているのか。中野区内の町会長(男性)はこう証言する。

「私らは小池都知事そのものに悪いイメージは持っておりませんし、助成金の条件にチラシを貼るということにも、ことさら抵抗がありませんでした。もちろん『政治色が強い』と難色を示したり、貼りたくないという町会もあったとは聞いています。

都知事選に向けたPRと捉えられても仕方ないかと思いますが、うちの町会はそういう判断はせずに掲示板に貼ったり、回覧板と一緒に配布しました。チラシは1ヵ月ほど貼っていましたが、もう剥がしました」

文京区内のビルに貼られたチラシ
文京区内のビルに貼られたチラシ

同会長は「条件などにはさほど抵抗がなかった」というが、そもそもの助成金の趣旨と効果には疑問が残るという。

「例えば町会単位で考えた場合、うちのように3000世帯を超える加入者がいる町会で、30万円でできることは限定的になります。一方で300世帯しかないような町会では単純計算でも一世帯に対し10倍の予算が充てられます。

正直に申しまして、町会の規模に関わらず一律30万円支給というこの助成金では、少なくともうちの町会内では地域防災を住民に周知するという意味ではまったく効果がなかったと思いますね」

では、1世帯あたり100円という計算になるこの助成金を、同町会ではどう使ったのだろう。

「基本的に災害に関して不足する防災資機材や防災備蓄品等を購入するための助成金なので、マスクと体温計を購入しました。当然、各世帯分まかなうのは無理なので、必要なタイミングで必要な方に配ろうかと考えております。

規模の小さな町会ではマスク1箱を各世帯に配布したところもあったようで、『なんでうちの町会は何ももらえないんだ』との小言もいただきました」

上田令子都議(本人SNSより)
上田令子都議(本人SNSより)

文京区のある町会も、“百合子チラシ”を助成金の条件と割り切って申請し、簡易トイレを購入したという。男性町会長がこう語る。

「ウチの町会では簡易トイレを購入して、昨年末から各世帯に配布しました。その領収書を提出したら都から助成金が振り込まれると聞いていますが、まだ振り込まれていませんね。防災力強化という意味ではそこまで効果があったとは思えませんが、やっぱり能登地震があったので、簡易トイレに興味を持つ人も増えたという感じはしますね」