「伊根で漁師になりたい」会社員7年目での決意

寺谷僚介さん(32歳)は小学生のころから毎年、父と一緒に京都市内の自宅から車で2時間の伊根町に釣りに行っていた。毎回同じ民宿「鍵屋」に泊まり、朝起きたら海があって、宿の前から船に乗って釣りに行ける楽園。大人になったら伊根に住もう……寺谷少年はそう心に決めていた。

時は流れ、少年は大学の経営学部を卒業。同級生がみんな就職活動をする中、同じように活動し、企業に就職した。医療機器の営業マンとして勤めていたが、やっぱり「伊根で漁師になりたい」という思いは消えなかった。

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江戸末期から昭和初期の舟屋が並ぶ伊根湾の景観。舟屋とは、1階が海から船を直接引き入れて格納する船倉、2階が居室などになっているこの地方独特の建物
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そこで、2017年ごろから人伝てに伊根の橋本水産を紹介してもらい、社長に「就職したいです」と連絡。「人手は足りているから」と断られるも、翌年には船舶免許を取得し「本気度を見せ」、就職希望をアピールし続けたところ、2019年、遂に橋本水産から内定をもらった。

寺谷さんは7年勤務した会社を退職し、伊根に移住した。