子どもにもカメラを渡しましょう
自分の顔のドアップ写真って成長しても見返せないですよ。卒業アルバムの個人写真から目をそらしちゃうのと一緒です。ぼくは子どもを撮るときにいちばん意識してるのは、絶対に声をかけないということ。それから離れて撮る。身長差も気にしないしうまく撮ろうとしないです。
それからちょっと考えてほしいんですけど、子どもはちいさいときから親からスマホやカメラを向けられているわけです。子どもって何かと親のマネをしたいじゃないですか。勝手に化粧品をいじってみたりパソコンをいじってみたり。
子どもからするとやっぱりカメラもいじってみたいんですよ。親のマネして撮りたいんです。子どもの写真を撮るなら、子どもにもカメラを渡して撮らせたほうがいいですよ。子どもの写真っていいものです。子どもの視点がわかるのがいいです。子どもが描いてくれたヘタな似顔絵や、つたない手紙って親にとっては宝物じゃないですか。子どもが撮った写真も一緒。宝物になります。
子どもと家族を撮ったら、自分は写真にうつらないじゃないですか。だから子どもができると夫婦の写真って少なくなるんですよ。子どもがいないときはいろんなところで二人で写真を撮ってたのに。子どもに夫婦の写真を撮ってもらえばいいんですよ。
ちいさい子どもをいちばん良く撮れるのは親。親をいちばん良く撮れるのはちいさい子ども。子どもに撮られることで「こっち向いて笑って」と顔ドアップのストレスも感じましょう。だから子どもにもしない。
子どもにもカメラを渡しましょう。壊れるって思うなら壊れないよう対策をすりゃいいでしょう。壊れたら修理すればいいじゃん。しっかりRAWで撮影して親が写真を現像してあげればいいです。
子どもにはカメラを渡したくない。自分は写真を撮られたくない。だけど子どもを撮りたいという人。身勝手さが撮影に反映されて写真にうつるだけです。
文・写真/幡野広志 (すべて書籍『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』より)