専門家の分析よりも”本物”の声を求める読者

――その一方でアドネットワークを扱うメディアの数は増えていますよね。

2018年発表の古いデータにはなりますが、内外切抜通信社によれば2009年から2018年の10年間にかけてニュースサイト数は2.7倍に爆増しました。また広告単価減に直面したメディアはネットワーク広告の設置数を増やすなどして対策していますが、結果としてさらなる下落を招いています。「単価が以前の状態まで戻るのは考えにくいのではないか」との意見も出てきています。

個人的な意見としても、雑誌・新聞のオンラインメディアが紙では有料で売っている情報をネットでは無料にして配信することへの違和感はあります。そもそも、取材・記事制作には結構なお金がかかります。良質なコンテンツに対してはそれ相応の対価を読者のみなさまからもらってもいいのではないかと思っています。

みんかぶの鈴木聖也編集長。1988年、前橋市生まれ。慶應義塾大学卒。共同通信、プレジデント社などを経て2022年5月より現職。2019年雑誌ジャーナリズム大賞デジタル賞受賞
みんかぶの鈴木聖也編集長。1988年、前橋市生まれ。慶應義塾大学卒。共同通信、プレジデント社などを経て2022年5月より現職。2019年雑誌ジャーナリズム大賞デジタル賞受賞

――どういったコンテンツが人気ですか。

専門家の分析よりも”本物”の声です。お金に関するコンテンツでいうと投資家のインタビューです。経済アナリストや金融専門家が発する分析よりも、実際に稼いでいる投資家が「何を考えているのか」「どんなマイルールを持っているのか」「どうやって銘柄を選んでいるのか」という情報に需要があります。日本は諸外国に比べて「超大物」の投資家が少ないでからこそ、数少ない「超大物」の生の声はコンテンツとしては貴重なのです。

マネー以外では「婚活」「不動産」「教育」といったテーマの特集が多くの会員を獲得します。これらはいずれもライフイベントで、人々が資産形成に励む動機でもあります。ただ「お金が好き」で投資をする人は少数です。

その情報も専門家より各領域の実践者から聞くようにしています。マネーコンテンツか、ライフイベントのコンテンツか、更に柔らかい芸能コンテンツか……。そのどれかを読みたくて一度入会した人が、他のコンテンツを見て「今後も継続したい」と思えるようなラインアップにしようとは思っています。

突拍子のなさを求め、編集方針・企画会議はなし

――どのように記事を企画していますか。

突拍子のなさを大切にするため、編集方針は決めていませんし、企画会議もしません。編集者たちとの日々の会話の中で決めています。

その際、Yahoo!ニュースランキング、X(旧ツイッター)のトレンド、グーグルトレンド、大手ウェブメディアのランキングなど、「世の中は今何に関心があるのか」を分析できるツールはすべて使います。その上で、その関心事に対して、「誰に語らせたら」「どういう切り口なら」お金を払ってでも読みたいか、を思いつきベースで決めてきます。

例えばジャニーズ問題ではサムソン高橋さんにゲイライターの視点で語ってもらったり、松本人志さんの問題ではプロインタビュアーの吉田豪さんに語ってもらったり。