見えてきた有効な打ち手
若手育成成功を実感している管理職の全体像を整理したうえで、具体的な打ち手についてその有効性を検証する。
まず、「配属ガチャ」「異動ガチャ」という言葉もあり、若手のキャリアに対して大きな影響を与える〝異動〞前後のコミュニケーションについて整理する。
「行っている」管理職と「行っていない」管理職との間で、有意に育成成功実感率が高かったコミュニケーションが2つ存在していた。ひとつは「事前に、異動先について希望を聞く機会を設けている」、もうひとつは「異動決定後に面談等の場で会話をする機会をつくっている」であった。
配属・異動の前後で、管理職が事前に希望を聞くこと、決定後に個別の場でコミュニケーションをとること、こうした実践には手間がかかるが、それに見合うリターンがある可能が示されている。
次に、職場での若手との日々のコミュニケーションについて、有効な手の検証を図表5―19に掲載した。高頻度(「毎週のように」「毎月のように」)で行っている管理職と低頻度(「半年に数回」「1年で1〜2回」「全く行わなかった」)の者を比較する形で示している。
示した項目すべてで高頻度の管理職が、低頻度の管理職よりも育成成功実感率が高い。個々の手立てについてというよりは、シンプルに若手育成についてコミュニケーションの密度が一定程度必要であるという結果と考える。現在、上司、若手ともに忌避されつつある〝飲み会〞等についても、他のコミュニケーションと同様の肯定的な結果が出ていることは留意すべきだろう。
ただ、職場における若手との日々のコミュニケーション別の効果と希少性の項目については、実施度合いと効果にかなりの差があったため、図にそれを含めて整理しておく。
整理のうえ、明確に特殊なポジションなのは図の左上に位置する「部下に自身の知り合いを紹介する」、さらに視界を広げれば「イベントや社内外の勉強会等に、部下を誘う・紹介する」であり、高頻度で行っている管理職は少数派だがその効果は高い。若手にある種の「セレンディピティ」の提示、本人の視界の外にある機会を提供する手立てであり、新たな打ち手群として注目すべきかもしれない。
文/古屋星斗