転職エージェントである森本氏は、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般も手がける。約30年のキャリアの中で、これまで3万人を超える転職希望者と出会い、1000人を超える経営者と公私を通じてつながりを作ってきた。
報道によれば、大企業からベンチャー企業への転職人数が3年で7倍になったと言われている。この結果について森本は「私の感覚とも相違ありません。特に転職先を大手からベンチャーにという人が非常に増えた印象です」と語る。
なぜ大企業からベンチャー企業への人材流出が加速しているのか。そこには、いくつか要因がある。
まず挙げられるのが、大企業内のポストの問題だ。
「成果主義を導入している大企業でも、それを適切に運用できているケースは少なく、特に20代~30代では、どんなに頑張っても評価は一律で大きな差が出ることはない。すると、決定権を持つポストに就くまで少なくとも10年単位で時間がかかるという現実は変わりません。さらに、事業の成長が鈍化し、マネージャーのポストが増えない中、最終的にポストに就ける保証もありません」
コロナ禍でベンチャー転職が増えた理由
さらに、この状況下にコロナ禍が重なった。森本氏は「コロナ禍をきっかけに、大企業からの人材流出が加速している」と指摘する。寄らば大樹の陰、危機の時こそ安定した場所にとどまりたいという志向が強まるのかと思えば、現実は全く逆のようだ。
その要因について、森本氏はこう分析する。
「今まで現状に疑問に思いながらも、深く思考する余裕もきっかけもなく仕事をしていた方が、コロナ禍で通勤も会食もなくなり、とにかく考える時間が増えました。そうすると、今の自分でいいのか、自分のキャリアはこのままでいいのかと考えるようになります。なおかつパンデミックが襲い、国際社会が不安定化する混沌とした世の中で、10年先なんて見えません。そうなると、いつ何があっても、どんな選択肢でも取れるように自分に力をつけておくことが最も重要なのではないかと考え、転職が視野に入ってくるのです」