「自衛隊車両とわからないよう車体を白く塗り替えることもあります」
昨年11月、筆者は陸自の車両や日本の盗難車などがどのようにして海外に密輸されていくかを追ってタイへ取材に行った。すると、タイ郊外の店舗で実際に陸自の高機動車が売られている現場を確認。さらに高機動車だけでなく、「73式」と呼ばれる陸自のジープまで売られていることを現認しており、今回防衛省が把握できていない自動車密輸の詳細な手口について「週刊プレイボーイ」(12/11号)にてレポートした。
取材に応じた現地の女性店員がいう。
「高機動車とジープは日本の自衛隊のもの。この高機動車にはエンジンがないため、数ヶ月前から売れ残っています。うちは昔から、タイやインド、サウジのブローカーから自衛隊の車を不定期に入荷していますよ」
確かに販売していた自衛隊車両には、敵から気づかれないようライトの光を調整するためのロータリースイッチ(管制灯火スイッチ)や、銃を立てかけておくための銃架など、自衛隊の車両であることがわかる装備が付いている。
さらに当時、現地からタイ語でSNSなどを検索しただけでも、高機動車を扱うバンコクの自動車ディーラーや所有者が比較的容易に見つかった。高機動車や自衛隊のジープを試乗する動画まであり、タイ国内に相当数の自衛隊車両が流出していることが推察できる。
長年に渡り自動車の密輸に関わっているという在日パキスタン人の男性はこう証言する。
「自衛隊車両は10年以上前から海外に送っている。払い下げた自衛隊車両を扱っている業者は私が知っているだけでも宇都宮や新潟などに数か所あり、後で組み立てやすいように分解してコンテナに乗せ船で運びます。一目で自衛隊車両とわからないよう車体を白く塗り替えることもあります」
こうして日本から不正に持ち出された自衛隊車両はタイのレムチャバン港に運ばれ、そこからタイ国内や別の国へと振り分けられているというのだ。