消費者に必要な態度

明言するが、「やめにくい仕掛けを講じる」企業には、「ライフタイムバリュー(以下、LTV)」の発想が欠けていると言わざるをえない。LTVとは、顧客が生涯を通じて利用してくれる金額を高めることを重視する発想で、短期的な関係よりも長期的に顧客と付き合うためのマーケティングを重視する考え方だ。

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このLTVの発想を持てていれば、既存顧客をやめにくくするために迷惑行為を仕掛ける、なんて手段を選ぶことはなくなる。一度イヤな思いをした顧客は二度と戻ってきてくれない。

さらにSNSなどで悪評が拡散されれば、サービスの印象が悪化し新しい顧客も利用の二の足を踏んでしまう。つまり、既存顧客も離れ、新規顧客も減るという悪循環に陥り、長期的に見れば、自ら墓穴を掘っているに等しいのだ。

本来企業が自らLTVの発想をもって過ちに気づき、自己変革していくことが望ましい。ただ現実には、既存顧客をやめにくくする迷惑な仕掛けは、この先もなかなか改善されないだろう。

その理由は、迷惑な仕掛けによって、「(やめるのが)めんどくさい」「(継続で)もういいか」と思わせれば既存顧客を引き止められる、と企業が顧客を軽視しているからに他ならない。そしてこんなにもやめにくい状況は、企業側にとってものすごくありがたい状況なのである。

改善させるには、「このままではダメだ」と企業のほうが危機感を抱いて考えを改めること。いっぽうで消費者側は断固たる決意を持って、しっかり解約、そして二度とそのサービスを利用しないという強い拒絶の意思表示をしていく必要がある。


文/永井竜之介 
写真/shutterstock