自分の幸せは周りの幸せから
「この前を高校のときも通学路で通ってましたよ。ガキのころは、ここら辺で寝てる労働者に毛布やおにぎりを配る活動を近所のガキと一緒にやったんですけど、そのときの掛け声が“わっしょい、わっしょい”なんですよ。神輿担いでもないのに“わっしょい”って。シュールやろ。なに担いでんねん。でもね“わっしょい”には、行き倒れそうな人らの気持ちを持ち上げるような、そういう意味もあるんやろ」
散歩の終わりを締めくくるのは、甘味処「ハマや」。南海線の萩之茶屋駅ガード下のこの店は、昭和の漫画『じゃりン子チエ』のテツがデートに使っていた喫茶店のモデルとなった店とも言われている。
「ここのぜんざいが大好きでねー。熱々なんですわ。だから俺はいつも、この餅を箸でのばして熱を分散させてから食べるんですわ。甘党な人には、ぜんざいとミックスジュースの組み合わせがおすすめです。ジュースがさっぱりしててお口直しにピッタリなんですわ」
最後は、SHINGO自身も幼少期にお世話になったという児童施設「こどもの里」へ。
「今日は息子とここで小学校帰りに待ち合わせしてるんです。俺もここにメンコ遊びに来たし、息子もここで宿題やったり遊んだり。親子二代でお世話になってます」
最後に、自身のアーティスト名にまでして背負う西成の街で活動し続けるのはなぜかも聞いた。
「使命なんて言ってられないですけど、せっかく、今回人間で生まれたから、人間ムキ出しで生きたいからです。いまだおっちゃんの歌や夜中1時に聞こえてくるテレサテンの音楽に溢れて、朝怒ってたおっちゃんが昼には笑ってる、みんな、地元LOVEやろ、人間LOVEやろ、の精神を忘れないで生きてれば救える命があると信じて2024年も生きていきたいねん。」
自分の幸せは周りの幸せからという考え方で誰もが生きていけば、世の中はいい方向に向かっていくはずなのに。みんな、地元LOVEやろ、の精神を忘れないで2024年も生きていきたい。
取材・文/河合桃子 撮影/高木陽春