貧血に牛肉、ラムには引き締め効果

心の落ち込みとともに疲労感も強いようなら、ビタミンB1が多く含まれる豚ヒレ赤肉(ランキング2位)がいい。ビタミンB1は別名“神経ビタミン”とも呼ばれ、神経の機能を円滑に保つのに役立っている。

不足すると物忘れがひどくなったり、憂鬱な気分やイライラにつながる。糖質の代謝に欠かせないため、足りないと糖質からエネルギーを作れず、疲労物質が体内に蓄積されて疲労感が強くなる。

「ビタミンB1は糖化を抑え、体内でAGEが発生するのを防ぐ働きがあることがわかっています。水に溶けやすく、体内にストックできないので日常的に少しずつ摂るように心がけましょう」(牧田医師)

「豚肉」は、あらゆる食品の中でこのビタミンB1の含有量が群を抜いて多いのだ。鉄分たっぷりの「牛肉」は、貧血の人に向いている。貧血を放置していると、酸素や栄養素を含んだ血液が全身に行き届かず、老ける要因になる。

「ただし脂身には中性脂肪やコレステロールを増やす飽和脂肪酸が多く含まれているので注意してください。牛ヒレや牛ももなどをしゃぶしゃぶなどでいただくといいでしょう」

鴨肉も鉄分が豊富で貧血を改善するが、皮下脂肪が多く、脂質の割合がかなり高い。一方で馬や鹿、鯨の赤肉は高タンパクで鉄分も牛肉並だが、低脂質のためおいしさの点で好みが分かれるかもしれない。

8位にランクインしているラム肉(羊の肉で生後1年未満のもの)は、脂肪燃焼効果がある。管理栄養士の望月理恵子氏が語る。

「ラム肉にはカルニチンという成分が含まれ、たるんだ体を引き締める効果があります。脂肪はカルニチンと一緒でないと、燃焼して消費できません。さらに最近の研究では、カルニチンは脳内に移行してアセチルコリン(脳内神経伝達物質)の産生を促し、老化やアルツハイマー型認知症による記憶力低下を防ぐ可能性も指摘されています。

また、ラム肉は他の肉よりしっかり噛む必要がある点も、老化防止につながります。噛んで唾液が出ると、唾液中のパロチンという成分が筋肉や骨の発達を促進し、若返り効果があります」

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老けない肉のランキングには動物の舌(タン)や心臓(ハツ)、肝臓(レバー)などの副産物は除外しているが、前出の大和田医師は「牛や豚のレバー」を一押しする。

「レバーは痛風につながるプリン体が多く含まれる一方で、筋肉再生と疲労回復に役立つという報告が複数あります。特に運動後などの疲労した時に適量を摂るといいでしょう。疲労は何らかのダメージから回復するために休息を求めている体のシグナルです。食事と睡眠で回復させることが重要ですね。回復力をキープすることは、老化を遅くする強い味方になります」

レバーには「美容ビタミン」として知られるビタミンB2を始め、ビタミンB群が豊富だ。望月氏は「B群はチームプレーで働くことから、全体的に摂れるように意識するといいので、その観点からもレバーは優秀」と補足する。

「肉のなかで、抗酸化力の強いビタミンAと、皮膚や粘膜を守る働きがあるビタミンB2が圧倒的に多く含まれているのはレバーです。神経細胞を生成するアラキドン酸が含まれ、脳が老けないためにも重要ですし、肌を再生する効果もあります。ただし、ビタミンAは脂溶性で体内に蓄積されるため、過剰摂取には注意が必要です。焼き鳥レバーの1串に一日の上限を超えるくらいの量が含まれています」

ビタミンAの推定平均必要量は50~64歳男性で650㎍RAE(上限量は2700㎍RAE)だが、焼き鳥レバー1本(約30g)で4200㎍RAE。レバーを多めに食べた日があったら1週間くらいは控えて摂取量を調整しよう。ビタミンAを過剰摂取すると、吐き気や頭痛が起きることがあり、長期間の多量摂取では肝臓の異常や中枢神経系への影響がある。

ハツ(心臓)には、コエンザイムQ10が豊富という。

「休みなく収縮する心臓が疲労しそうな時、疲労回復のために食べるといいでしょう。コエンザイムQ10は細胞が酸化するのを防ぎ、ビタミンCやEを再生させる強い抗老化作用があり、医薬品として心疾患や脳出血の治療に利用されている物質です」(板倉医師)

頭も体も老けないためには、ランキング上位の肉を中心にさまざまな種類を食べるといい。幅広い効能が取り入れられ、同じ消化酵素に負担がかかることも避けられるだろう。


図/書籍より
写真/shutterstock

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