「楽しそうやね」と言われたのに警察を呼ばれて…
長い歴史の中で育まれてきた、いけず文化だが、年々国際化が進む京都の現状を踏まえると、井上氏は「そろそろ言語習慣を改めたほうがいいのかもしれない」と話す。
「私の友人に、アフリカのマリ共和国から京都に移り住んだ方がいらっしゃいまして。とても交友関係の広い方で、よくお客さんを招いてホームパーティーをなさっていたそうです。ある日、近所に住む女性から『いつも楽しそうやね』と言われたらしいのですよ。
それに対して友人は『楽しいですよ。よかったら一緒にどうです?』というやり取りをされたらしいのですが、数日後に『近所から騒音に対する苦情が来ている』と警察から連絡が入ったそうで…。
その女性は『やかましいわ』という意味でマリの人に話しかけたんでしょうね。しかし、世界中の人が綺麗な言葉に包んだ本音を読み取れるわけではありませんから。京都の国際化を考えるのなら、いけずな言い回しにはいささか問題があるように思えます」
一方で、いけず文化を積極的に導入すべき場面も存在するようだ。会社内のパワハラ問題を回避するためには、いけずな言い回しが意外と有効だという。
「今はどんな職場でも言葉に気をつけなくてはならないですよね。私は以前、知人の弁護士に京都のいけずな言葉はハラスメントになるのかを聞いたことがあります。
例えば、いつも時間にルーズな部下に対して『あんたいつも、ええ時計したはるなあ』と言ったらどうなるのか、と。
結果、ハラスメント認定は受けないそうです。全国の重役さんたちに、京都弁学習講座でも開いてあげたらいいんじゃないかと思いますね」
取材・文/渡辺ありさ