当時の日記につづられた本音
――メンタル的に一番辛かったのは、やっぱりダウンタイム中ですか?
ダウンタイム中というか、術後ですかね。特に最初の1ヶ月間は絶対安静と言われていたので、ずっと家にいたのですが、痛みはなくならないし、完成形がわからないので、すごく病んでいました。
実は、その当時、執刀医の先生に「少しでもいいから日記を書いた方がいいよ。この経験は君の財産になるから」と言ってもらっていて、日記をつけていたんです。
今、それを見返すと、本当に辛くて、痛くて、しんどくて、堪らなかったんだなって思います。
――日記を読むと、当時の藍里ちゃんの辛さが痛いほど伝わってきます。当時「やらなきゃよかった」と後悔したことはありましたか?
やらなきゃよかったとは思わなかったです。でも、手術から半年間は顔が腫れている状態だったこともあって「本当にこの腫れは引くのかな」って不安でした。一週間に一回の定期検診のたびに「これが完成形ですか?」って先生に聞いていましたね。
――それに対して、先生はなんと答えたのでしょう?
「はっきり“完治”と言えるまでに5年はかかるよ」って。最低限の活動ができるようになるのが1ヶ月後、腫れが引くのが5ヶ月後くらい。手術後すぐの顔をキープできるわけではなくて、その後の5年間ダウンタイムが抜けつつ、老化も加わっていくと説明されました。
――なるほど。
整形後に“After”として出た顔と、4年経った今の顔を見て「整形が崩れてきてる」とか「顔が戻ってきてる」って言う人もいるのですが、そうじゃないんですよね。整形している人も、していない人も、同じように年を重ねていくのだから顔の変化はあって、当たり前。
整形は魔法じゃないし、漫画のように“手術して包帯を取ったら美少女に!”なんてことは現実ではありえないことなのですが、そのことを知らない人が多いのかなとは思います。
――たしかに、そうですよね。今回、改めて話を聞いて、骨を切ることの壮絶さを感じましたもん。
実際、私は顔の半分くらいは、今でも感覚が鈍いままです。これはもう治らないのですが、事前にリスクとして覚悟していたことなので、受け入れて生きていこうと思っています。
「整形してよかった」4年たった今もそう思える理由
――整形を公表したときは、どんな心境でしたか?
別に大きなこととしては捉えていませんでしたね。もちろんリスクは大きいですけど、ロングヘアがショートヘアになった感覚というか。
でも、(公表したときに)世間から受け入れられるのかなという怖さはありました。
――公表してみると批判的な声よりも、前向きな姿に感銘を受けた人が多かった印象です。
そうですね。公表した番組の放送後に、めちゃくちゃエゴサしたのですが、私が悩んでいた過程を知って共感してくれた人が多いなと思いましたね。
――整形したことを振り返って、今どう思っていますか?
本当に整形してよかったって、今でも毎日思っています。頑張ってよかったなって。
――そう思えるようになったのは、いつ頃からでしょう?
思いっきり笑えるようになったとき。整形後、初めて撮影したときに“笑うのが恥ずかしい”という引っ掛かりがなくなったことに気づいて。自分でも初めて見るくらい笑顔の写真が撮れたんです。そのときに「頑張ってよかったな」「あの大変なダウンタイムを乗り越えられた自分すごい!」って思えました。
――たしかに整形前よりもたくさん笑うようになりましたよね。性格も、前向きになったなと。
整形する前は、ネガティブなことを言って、自分を守っていたんだと思います。「どうせこうだから」と自分を下げておくことによって、“あれ?そうでもないじゃん”ってガッカリされないようにしていたというか。
――では、今振り返っても整形してよかったなと?
もちろん今でも落ち込むことはありますし、「この顔盛れてないな」「この部分が気になるな」って思うこともありますけど、「それも自分」って思えるようになりました。整形しているから、“ありのままの自分”ではないのかもしれませんけど、コンプレックスを治したかっただけで、完璧な美少女になりたかったわけではないので、今は今の自分に満足しています。
――最後に、同じように容姿に悩む人や、整形をする人が多くなった今の世の中に、藍里ちゃんが伝えたいことを教えてください。
“なんか気になる”でやってしまうと、どんどん気になることが出てきてしまうので、自分のコンプレックスを徹底解析してから受けることが大事かなと思います。
私は整形する前、整形していないのに“整形失敗鼻”と言われていた時期があって、その時に“鼻を変えればいいのかな”と思いました。でも、骨切りをしたら、鼻のことを言われることがなくなったんですよね。
みんながみんな、なりたい顔になれるわけじゃないから、それを理解せずにやってしまうとどんどんどんどん整形にのめり込んでしまうと思うので、“本当に自分がコンプレックスに思っている部分は何か”を知ることが大切だと思います。
――ありがとうございました。
取材・文/瑞姫
撮影/神田豊秀