天才の「苦悩」と「孤独」に共感させられる圧倒的な人間の描写力

――担当編集者として『ダイヤモンドの功罪』のすごいと思うところを教えてください。

スポーツ漫画の長い歴史の中で、天才の「苦悩」と「孤独」というテーマをほかにはない切り口で描いているところです。しかも、数多くの名作が存在する野球というジャンルですからね。おそらく、天才には共感性が低いので、あまりテーマとして採用されてこなかった背景はあると思います。でも、平井先生の人間の描写力によってそのハードルを超え、むしろ人間味がストロングポイントになっているという。本当にすごい作品です。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社

――伊佐治さんが特に好きなシーンはありますか?

多すぎて難しいですが…。パーソナリティが掘り下げられているからこそ、どの登場人物も野球をしているときの本気の顔にグッときますね。あとは、2話目で綾瀬川がはじめて本気で野球をして、日本代表のメンバーたちに認められていく過程もすごく気に入っています。野球をしている綾瀬川が本当に楽しそうで。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社


あと野球のシーンではないですが、3話目のかき氷をみんなで食べているところも好きです。イガがかき氷機から直で食べるところとか。こういった人間らしい、かわいらしい描写があるからこそ、シリアスなシーンがソリッドで伝わりやすくもなりますし。先にも言いましたが、コマの隅々までこだわりがあるので、読者のみなさんにはぜひ登場人物のさまざまな魅力を見つけていってほしいです。

『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
『ダイヤモンドの功罪』©平井大橋/集英社
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――最後に、今後の展開について話せることがあれば教えてください。

ストーリーの展開については、今後も毎週の楽しみにとっておいていただければと思います。変わらずていねいに、綾瀬川とその周りの人たちの人生を描いていくと思うので、ぜひ一緒に見守ってください。

彼らがどんな人に出会って、どう成長していくのか、担当編集の私自身、心配と期待が入り混じった気持ちで読んでいます。知り合いや親戚の子どもを見ているような感覚です(笑)。どうぞ引き続きの応援をよろしくお願いします。

取材・文/鳥山徳斗