「合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」
――本作は読むほどに「家族の話」であると感じました。問題のある家族に見られる傾向や共通点はあるのでしょうか。
子供が生まれて大人になる過程では、問題があって当たり前です。だからこそ、その問題に対してどう向き合うかが大事で、シンプルにいえば、子供がのっぴきならない状況に陥ったときに、「何をおいてもお前が大事だ!」と親が言えるかどうかです。
現実には、子供の命よりもお金や体裁、自分の人生が大事という親がごまんといます。私からすると、そういう親の“やばい価値観”は子供にも引き継がれます。親のことを言うと、この国では怒られてしまいますが、もうほとんどが親の影響ですよ。大人になって承認欲求が強い人は、例えば子供のときに親からぜんぜん話を聞いてもらっていなかったりします。
だから、問題のある家族に見られる傾向と共通点としては、子供にマイナスの接し方をしていること。ちゃんとコミュニケーションをとってプラスを与えられる親御さんが育てた子供は、やはり社会でもプラスを与えていると思います。
ただし、こと金儲けとなると、人にプラスを与えられる人ほど、騙されたり搾取されたりと損をしていることが多いんですよね。
――たしかに漫画で取り上げられているケースは、裕福なご家庭が多いように思いました。
傍目には何不自由ない生活をしているのに、子供がおかしくなる家庭では、一線を越えた育て方をしています。実際に、「お金のために合法的に人を殺せる商売が医者だから、ハイスペックな資格を取れ」と子供に言っていた親もいました。そんなことをパッと教えられる親なんてそうそういないでしょう?
そして、うちに依頼してくるのは、そのハイスペックな資格がとれなかったパターンです。
もともとの親のやばい価値観が、精神的な病気と手をつないで爆発してしまうんですね。でも、裏をかえせば親がそれをやっていいと言っているわけですからね。たまたま、彼が医者になれなかったという話なだけで。