作品を観るきっかけは切り抜き動画

では、Z世代は動画コンテンツをどのように観ているのでしょうか。ライターの稲田豊史さんの著書『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)が話題になったことで、若い世代の「倍速視聴」(動画の再生速度を早くする視聴方法)や「ネタバレ視聴」(物語の結末を知ったうえで観ること)について聞いたことがある方、実践している方もいるかもしれません。

損保ジャパンの2022年9月の調査によれば、倍速で動画を視聴するZ世代は70%に及び、上の世代と比べて最も倍速視聴をする世代です。私がヒアリングした限りでは、「倍速視聴」や「ネタバレ視聴」、さらに「ながら視聴」(別の作業をしながら動画を観ること)も含めれば、Z世代のほとんど全員が、いずれかの視聴方法を経験したことがありました。

「倍速視聴」をする理由としては、「時間がもったいないから」「早く結末が知りたいから」などが挙げられ、いわゆる「タイパ」(タイムパフォーマンス)を重視する傾向が見られます。

「ネタバレ視聴」については、「先に結末を知って良い作品か判断したうえで、観るかどうかを決めたい」ようです。Z世代は膨大な情報やコンテンツがあふれる環境で育ってきたからこそ、その取捨選択に敏感です。面白いコンテンツなら全部観たいけれど、面白くないのなら時間もお金もかけたくない。だから「ネタバレ視聴」することで、リスクヘッジをしているとも言えます。彼ら彼女らは時間に追われているというよりも、「自分の時間をできるだけ目一杯楽しみたい」というポジティブな気持ちからタイパを重視しているのです。

作品を知るきっかけとして多いのは、Instagram(インスタ)やTikTokにアップされている切り抜き動画です。切り抜きは本来違法な動画ですが、最近はその反響の大きさもあって、ドラマや映画の公式アカウントが活用する場合も少なくありません。

Z世代は、ドラマやバラエティのキュンキュンするシーン・面白い場面が数10秒だけ抜粋された動画を観て、気になったらアマプラやネトフリでの視聴に至るのです。ただしここでも、作品を最初からちゃんとすべて観るのではなく、「倍速視聴」「ネタバレ視聴」「ながら視聴」を駆使しながら作品に触れていきます。

「おもしろくないなら、時間もお金もかけたくない」倍速視聴・ネタバレ視聴を駆使するZ世代特有の「テレビ」との向き合い方_2