人はなぜ、わざわざ難しく言おうとするのか
もうひとつの物差しは、「小学生にもわかる言葉で伝える」ということです。
決して小学生をバカにしているわけではなく、それくらい簡単な言葉でないと誤解を生む可能性があるからです。前項で挙げた名キャッチコピーをもう一度よく見てみてください。すべて、小学生のときに習う言葉で構成されています。
人は何かを伝えようとするとき、つい難しい言葉や気取った言い回しをしてしまう傾向にあります。それはずばり、自分に自信がないからです。
私は読書が好きで、難しい表現や漢字を覚えるのも好きでしたが、それが仇になり、何度も先輩から注意を受けてきました。
就職活動のときに、希望している業界に勤める先輩に面接の練習台になってもらいました。そこで私は、こんなふうに自己紹介をしました。
「私は、幼少期から友人に恵まれ、赤心の触れ合いを重ねてきました。いまでも密に連絡を取り合い、肝胆相照らす間柄です」
面接官役の先輩はすぐにストップをかけて、「勘違いしてないか? 伝えるということは、難しい言葉を使って賢く見せることじゃないんだ。誰が聞いても瞬時に理解できることがいちばん大事なんだぞ」と注意してくれました。
私はいつの間にか、自分の知識をひけらかして、伝わらない言葉で自分を飾ろうとしていたことに気づいたのです。では、なんと言えばよかったのか?
ひと言で伝わるようにまとめると、「私は、多くの友人に恵まれている人間です」と簡潔にし、その後に「彼らとは子どものころから助け合い、いまでも親友と呼び合える関係です」と続ければいいだけでした。
あっさりしているように見えますが、少なくとも言いたいことは伝わるし、相手も「それはどんな友達なの?」と話を続けたくなるでしょう。大きな落とし穴に落ちる前に、的確に指摘してくれた先輩には、いまでも感謝しています。
〈練習問題〉
以下の文章を、20文字の法則でまとめてみましょう。
●気の遠くなるほど遥かいにしえのころ、とある場所で翁(おきな)と嫗(おうな)が糊口をしのいでいました。
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●昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいた。
「難しいことを簡単に。簡単なことを伝わりやすく」をつねに意識するようにしましょう。