「好きの責任がある。プロとして好きになる仕事」

――中森さんはなぜ上戸彩さんを推したのでしょうか。

本当に小さくてかわいくてね、目が離せなかった。でも、上戸彩を推したとき、他の審査員たちの賛同はなくて、あの冷たい空気といったらなかったですよ(笑)。

歌の上手い子には音楽部門賞とか、演技の上手い子には演技部門賞とかがあるけれど、かわいい子はただかわいいとなっちゃうでしょう。そこが難しい。でも、アイドルってそうじゃないですか。歌が上手い子が売れるかというと、そうとは限らない。じゃあ、かわいい子が売れるかというと、そうともいえない。

新刊の中でも書いたけど、薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の角川三人娘でいえば、どうやったって渡辺典子の顔がバランスがよくてかわいい。今、乃木坂46に入ってもいけると思う。でも売れたのは薬師丸ひろ子や原田知世だった。この不思議さね。

僕は2017年に『アイドルになりたい!』(ちくまプリマー新書) というアイドルになるための入門書を書いたんだけど、それまでそういう本がなかったんですよね。アイドルのなり方がわからないんだよね。

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例えば、サッカー選手になりたい人で、サッカーのルールを知らない人なんていないじゃない。100メートル走であれば9秒99で走った人が10秒の人に勝つというルールがあるでしょ。でもアイドルに関しては歌が上手くてもダメだし、スタイルがよくても人気がでるわけじゃない。何がよくてその子が選ばれるのかがわからない。つまりルールがわからないわけですよ。

じゃあ、アイドルのルールとは何かというと、それは好きになってもらうこと。しかも単なる恋愛じゃなくて、メディアを通して好きになってもらう。テレビの時代はテレビを通して、今はインターネットを通して好きになってもらう。握手会とかもあるけれど、握手会も1つのメディアで、そのメディアを通して好きになってもらう。

そして大体は“知っている”から好きになる。テレビに毎日出ていたら好きになる。でも、一番最初にその子たちが無名のころに好きになる人たちがいる。それがオーディションの審査員なんだよ。

僕が大学で講師をしていたころに学生から「先生は上戸彩を選んだとき、単に好みで選んだんじゃないですか」と聞かれたので「そうだよ。好みで選んでいる。ただ、違うのは審査員としてやっているから、好きの責任がある。プロとして好きになるのが仕事なんだ」という言い方をしました。

本のタイトルは「推す力」だけれど、推すというのはそういうことだと思う。