軽やかで生命力に溢れたイスラエルのダンス

「僕たちは民衆なのに、権力者目線で戦争を語りすぎている」戦争の痛みを描き続ける塚本晋也監督が『ほかげ』と森山未來に託した平和への祈り_9

──森山さんは10年前にイスラエルに1年間滞在し、ダンスカンパニーなどで活動されていましたよね。現在のイスラエルの状況について感じることはありますか?

森山 純粋に現地にいる友人・知人たちの身の安全を願っています。

イスラエルの今を僕が語るのは、誤解を生む可能性もあるので難しいところです。報道ではガザもハマスも一緒くたになっている印象があり、公平に正確に報道してほしいという思いもあります。この問題には政治的なこと、イスラエルの歴史などさまざまな問題が絡んでいるので、語るのは悩ましいです。

──ダンスも含めて、当時、現地で感じたことを教えてください。

森山 肉体を使った表現、コミュニケーションなど、イスラエルのダンスには人間の本質が宿っています。その熱量は膨大で生命力に溢れています。

イスラエルという国家には何千年も続くユダヤの思想が横たわっていますが、文化としては離散し続けているので、まさにダイバーシティ状態。そもそも建国したのが1948年という若い国ですから。

でも、だからこそ、自分たちのカルチャーや表現を謳歌している空気感がありました。そこが日本との違い。日本は歴史があり、熟成された素晴らしいカルチャーを持っていますが、熟成されているがゆえに細分化され、身動きが取れなくなる場合もある。

イスラエルのカルチャーはその対極にあります。今を謳歌しながら表現に繋げていて、その軽やかさは魅力的だし、大いに刺激を受けました。