「3.5%」の人が立ち上がれば、社会は変わる
ただ、そうはいっても、私たちは資本主義の生活にどっぷりつかって、それに慣れ切ってしまっている。本書で掲げられた理念や内容には、大枠で賛同してくれても、システムの転換というあまりにも大きな課題を前になにをしていいかわからず、途方に暮れてしまう人が多いだろう。
もちろん、資本主義と、それを牛耳る1%の超富裕層に立ち向かうのだから、エコバッグやマイボトルを買うというような簡単な話ではない。困難な「闘い」になるのは間違いない。そんなうまくいくかどうかもわからない計画のために、99%の人たちを動かすなんて到底無理だ、としり込みしてしうかもしれない。
しかし、ここに「3.5%」という数字がある。なんの数字かわかるだろうか。ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである。
フィリピンのマルコス独裁を打倒した「ピープルパワー革命」(1986年)、大統領のエドアルド・シェワルナゼを辞任に追い込んだグルジアの「バラ革命」(2003年)は、「3.5%」の非暴力的な市民不服従がもたらした社会変革の、ほんの一例だ。
そして、ニューヨークのウォール街占拠運動も、バルセロナの座り込みも、最初は少人数で始まった。グレタ・トゥーンベリの学校ストライキなど「たったひとり」だ。
「1%vs.99%」のスローガンを生んだウォール街占拠運動の座り込みに本格的に参加した数も、入れ代わり立ち代わりで、数千人だろう。それでも、こうした大胆な抗議活動は、社会に大きなインパクトをもたらした。デモは数万~数十万人規模になる。SNSでその動画は数十万~数百万回拡散される。そうなると、選挙では、数百万の票になる。これぞ、変革の道である。
資本主義と気候変動の問題に本気で関心をもち、熱心なコミットメントをしてくれる人々を3.5%集めるのは、なんだかできそうな気がしてこないだろうか。それどころか、資本主義の格差や環境破壊に怒り、将来の世代やグローバル・サウスのために闘う想像力をもって、一緒に闘ってくれそうな人は、日本なら、もっといてもおかしくないくらいだ。