クリス・ブルックスの前ではむき出しになってしまう

クリス・ブルックスは2023年の7月以降、入江茂弘、赤井沙希を相手にKO-D無差別級王座の防衛を重ねた。そして上野は次期挑戦者に名乗りを上げ、クリスはこれを受けた。2023年11月12日(日)、両国国技館大会で同王座のタイトルマッチが行われる。

「クリスを前にしてマイクを取ってしゃべり出すと、なぜか泣けてくるんですよね。クリスとは親友で、ふだんから会話もしている。でも言葉の壁もあるから着飾っても伝わらないし、自分の一番シンプルな気持ちを伝えてきました。だからこそ、クリスの前ではむき出しになってしまうんだと思います。前哨戦で、自分でも思ったことないくらい『お前を倒したいんだ』という気持ちが出た。この感覚はいまはクリスにしか持てない」

クリス・ブルックスとリングで ⒸDDTプロレスリング
クリス・ブルックスとリングで ⒸDDTプロレスリング

もっと自分をダイレクトに伝えられるプロレスラーになりたい。自分のすべてをさらけ出せるプロレスラーになりたい。上野勇希という“人間”が溢れ出るような―そんな試合をしなければ、だれにも見てもらえないと上野は考えている。

なぜプロレスの試合には、人間性が出るのだろうか?

「僕たちプロレスラーは対戦相手をぶちのめしたり、自分ばかりが光ればいいわけじゃないことを理解しているからだと思います。『お客さんの思いをもらっている』、『思いを伝えている』という表現にもなると思うんですけど。人間味が出ている選手というのは、表現ができている人だと思うんですよ。悔しいも、痛いも、負けたくないも、うれしいも、全部をさらけ出すのがプロレスなんだと思います」

DDT上野勇希の涙のワケと「青木真也vs秋山成勲」の衝撃―「自分のすべてをさらけ出せるプロレスラーになりたい。そうでなければ誰にも見てもらえない」_4
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上野勇希はクールでドライ――そう勝手に思い込んでいた。上野自身も、かつては「冷めた人間だった」と話す。しかし、いまの彼はどうだろう。こんなにもプロレスを深く思考し、プロレスを心から愛している。コンプレックスから自分を取り繕っていたころの彼は、もういない。両国国技館で、きっとそれを証明してくれるはずだ。

取材・文/尾崎ムギ子
撮影/林ユバ
プロレス試合写真/ⒸDDTプロレスリング
撮影協力/ゴールドジムイースト東京店

#1 上野勇希の半生

『Ultimate Party 2023』
■日時:2023年11月12日(日) 開場12:30 開始14:00
■会場:東京・両国国技館
■特設サイト:DDTプロレスリング公式サイト (ddtpro.com)