ゴールが不明確だから失敗に終わる

——リスキリングに取り組む企業は年々増加しています。よくある失敗パターンとその解決法を教えていただけますか?

「企業が従業員に対してその目的を明確に説明しないまま、セミナーやオンライン学習などの機会を提供し、そのコストに見合うリターンを得られない」という失敗はよくあります。コストを回収できないばかりか、最悪の場合、従業員がそうやって身に付けたスキルを活かすために他所に転職してしまうこともあるでしょう。

企業が上記のような失敗をしないためには、2つのポイントが挙げられます。
まずは、企業が従業員に対して、リスキリングの目的を明確に示すこと。企業が今後どの方向に進むのかがわかって初めて、従業員がどんなスキルを身に付けるべきかが決まるためです。

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もう1つのポイントは、リスキリングの成功を従業員の個人的な努力に依存しないこと。例えば、休日や帰宅後などの就業時間外にリスキリングさせようとした場合、やる気や時間のある人だけが取り組み、目標とする労働移動が実現しない可能性があります。企業は就業時間内に、従業員にリスキリングをする時間や実践の機会を与えることが重要だといえます。

——リスキリングを受ける側の取り組み方についてもお聞きしたいです。20〜30代の若手が今から身に付けるべきビジネススキルには、どのようなものがありますか?

一般的にビジネススキルは、専門的な知識や技術といった「ハードスキル」と、コミュニケーションやマインドセットなどの「ソフトスキル」に分けられます。若手が身に付けるべきスキルで言うと、ハードスキルの基礎とソフトスキル全般だと思います。

特に、ハードスキルを主体的に身に付けることは非常に重要です。米国企業ではジョブ型雇用より一歩進んだ、スキルベース雇用が広まりつつあります。これは、学歴や職務経歴ではなく、応募者のスキルをもとに選考、雇用する方法のことです。

ジョブ型雇用との大きな違いは、4年制大学を卒業していることよりも、どんなスキルを保有しているかが評価される点。この“スキル重視”のトレンドは、いずれ日本にも訪れると考えています。

どのようなハードスキルを身につけるべきかは一概に言えませんが「成長産業で役立つスキルか」という観点で選んではどうでしょうか。

最近ではAIを活用したDXだけでなく、脱炭素に向けたGX(グリーン・トランスフォーメーション)なども注目されています。こうした取り組みの市場が拡大すればするほど、キャリアの幅や移動先での業務が広がるうえ、給与も上がっていく可能性が高いです。

また、ソフトスキルは長い時間をかけて習得していく性質のものなので、こちらも若手のうちから意識して学んでおくのがいいと思います。