「朝早く起きてお化粧や服装も気合い入れて来ました」
そんな事情を知ってか知らずか、生の猿之助を見たくて朝早くから並んだ歌舞伎ファンたちも当然いる。1人目は午前9時15分ごろに到着し、整理券1番を獲得した埼玉県60代女性だった。
「ドラマなどテレビ出演で好きになった猿之助さんのにわかファンなので、まさか1番に並ぶとは思いませんでした。9時に霞ケ関に着いたので早すぎるわけではないと思います。前にニュースで見た時にだいぶ顔がやつれて老けて見えるような感じだったので、今でも憔悴してる状態なのか、ずっと心配だったんです。生の声を聴いて安心したいです。家族とどんな内容の会話をして、なんで心中するようなことになったのか、もちろんそのあたりも気になりますけど、やっぱり1番は本人の様子を気にかけてます」
タッチの差で2人目に並んだのは、静岡県在住の60代女性だ。
「朝7時ごとには家を出て新幹線に乗ってきましたよ。当たれば5月の公演以来の生の猿之助さんなので、朝早く起きてお化粧や服装も気合い入れて来ました。ファンクラブにも入ってるんです。猿之助さんを応援するためにサルの人形も鞄につけてきたんですけど、荷物を預けなきゃいけないんじゃ見せられないですね、残念。もしかしたらこれが猿之助さんを生で見る最後の機会になるかもしれないと思うとじっとしてられなかったんですよ。そりゃあ真相というか、家族の間でどういうやりとりがあったのかも気になりますけどね、それよりも本当にひと目でもいいから猿之助さんの姿を見て、今の様子を知りたいです」
9時20分ごろに並び始めた3番目の40代女性は、なんと福岡県からやってきていた。
「他にも用事はありますが、昨日福岡から母と来ました、母が歌舞伎好きなので見られるなら見たいと。仕事で猿之助さんの関係者の方とお話する機会があったのですが、猿之助さん、事件前はちょっと横柄になっていたなんて話も聞きました。なのでどれくらいしおらしくなってるのか、私も確かめたいですね」
だが、こうした熱心な歌舞伎ファンたちも、大量動員されたバイト軍団の「数」の前には木端みじんにされるしかなかった。神奈川県から来た猿之助ファンの60代女性も「倍率50倍」の壁に阻まれ、うらめしそうだった。
「今後、復活するのかどうかにも深く関わる公判ですからね、直接猿之助さんを見たいのと、同じ空気の中で応援してあげたい気持ちが強くて来ました。ただこれだけ倍率が高いと当選はやっぱり無理ですね、応援できなくて悲しいです。テレビや雑誌の記者さんにはハズれたファンのためにも一言一句全てと表情とか細かく報道してほしいですよ。バイトみたいなの雇って並ばせてるって噂になってますよ。そこまでしたからには詳細に報道してくれないと納得いかないですね」
千葉県在住の60代女性も涙を飲んだ。
「たとえ公判であっても、そしてひと目でも見られる可能性があるなら、と思って来てみたんですけど、ハズれてしまいましたよ。猿之助さんのファンの人もチラホラいましたけど、雇われて並ばされてるみたいな人たちが圧倒的に多かった気がします。ファンは2割もいなかったんじゃないですかね」
友人と2人で並んだという岡山県在住の60代も、傍聴はかなわなかった。
「やっぱり2人ともハズれちゃいました。でもせっかくなんで入り待ちと出待ちしようかと思ってます。2人で5月頃に明治座に行って見たのが最後の生の猿之助さんだったかしら。それにしても中に入れないとなるといろいろ気になってきますね。私たちが一番気になるのは、職業を問われたときに何と答えるかなんです。『無職』や『元歌舞伎役者』だったら、もう復帰するつもりがないってことじゃないですか。だからそこだけは確実に報道でも教えてほしいですよね」
熱心な“ファン”たちの想いが通じたのか、猿之助は後半で裁判長から職業について聞かれると「歌舞伎俳優です」とはっきりした口調で説明した。事件後の心情についても明らかになり「自分には歌舞伎しかない。許されるのであれば、舞台に立ちたい。歌舞伎で償っていきたい」と取り調べの際話していたことが調書により明らかになった。
公判にて検察は懲役3年を求刑しており、判決は11月17日に言い渡される。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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