「目にいい=視力が回復する」ではない

ここまでの話でもおわかりいただけたかと思いますが、ひと口に「目にいい」といっても、「目の疲れの軽減」から「黄斑変性など特定の疾患の予防」までさまざまな意味があるわけです。

眼科専門医として日々、患者さんと接していると、そのあたりをひとまとめに捉えている方が非常に多いと感じます。

テレビコマーシャルなどで「目にいいサプリ」と聞くと、何となく目の疲れを軽減してくれて、目の病気の予防・治癒も期待できて、おまけに下がってしまった視力まで回復できるかも……そんな期待を抱きがちではないでしょうか?

しかし、例えば、すでに0・1以下にまで視力が低下している人が、毎日せっせとブルーベリーやニンジンを食べたり、アントシアニンやビタミンAのサプリメントを飲んだりしても、視力が0・1以上になることは期待できません。毎日、45グラムのケールを食べ続けても、視力が回復するわけではないのです。

「ブルーベリーは目にいい」は戦時中に作戦としてバラまかれたエセ情報…眼科医が警告「目にいいといわれるサプリを飲んでも視力は回復しない」_3

そうなると気になるのは、「視力回復効果が期待できる」という意味で「目にいい食べ物」はあるのか、あるとしたら何か、でしょう。しかし残念ながら、現時点ではそのような食べ物は発見されていません。

したがって私たち医師としては、「アントシアニンは目にいいですか?」と問われれば、「目の疲れには多少、軽減効果があるとされています」と答えるだけです。

「ビタミンAは目にいいですか?」と問われれば、「ビタミンA欠乏症は視力低下につながるので、きちんと摂取するよう心がけるに越したことはありません」と答えるだけです。

「ルテインは目にいいですか?」と問われれば、「ものを見る機能を担う中心窩の視細胞に必要な栄養素なので、中年以降に積極的に摂取することは、黄斑変性の予防に多少は寄与すると思われます」と答えるだけです。