台本を手に取った瞬間の緊張感
マダミスでは自分の役を把握するため、まず始めに配役の台本を読み、自分の設定や目標、サブミッションなどを確認する。
私の配役は怪しさ満点の男性キャラクターで、メイン目標は「犯人として捕まらないこと」。ストーリー構成上、自分が犯人かどうかは曖昧な状態でスタートした。
設定には「最後まで隠したほうがよさそうなもの」「公開することで自分が有利になりそうなもの」の両方が記載されており、これらをどう利用していくか考える必要があった。
マダミスでは物語の舞台の見取り図把握も重要。「ここで叫び声が聞こえたということは……」「ここで犯行が行われたということは……」と推理をするためにも、見取り図はできる限り頭に入れたい。
台本を読み込んだところで、本格的にストーリーが動き出した。
瞬時の判断力と的確な質問力が試される「密談」
少人数で行う「密談」は、マダミスの醍醐味のひとつ。「この人の情報を引き出したい」、もしくは「この人とだけ情報を共有したい」というときに、少人数で会話ができる場のことだ。
ライターとしては、ここはプロの力を生かして相手から有益な情報を引き出したい。「それはなぜですか?」「なんでそんなことをしようと思ったんです?」「何時ごろのことですか?」と、とにかく細かく聞き出し、その情報を生かして次の密談相手を揺さぶる。
話した内容だけではなく、そのときの相手の言葉の濁し方や詰まらせ方も大きなヒントになる(あくまで役として怪しいかどうかであり、「台本をもらった時に表情が強張っていたから」などのメタ的な推理はナンセンスだ)。
マダミスには設定はあるがセリフはない。それなのにプレイヤーは次第に「そのキャラクターらしい」抑揚やクセをつけて話すようになる。その雰囲気が、さらに世界観に入り込ませる。
話を聞くうちに、曖昧な発言をする人、ひとつのことにこだわり続ける人、唐突に「こうするべきだ」と言い出す人など、徐々に怪しい人が現れる。……というか、怪しい人しかいなくなる。
実は私も最後の密談で、自分の潔白を示したいあまり、めちゃくちゃ怪しい行動を取ってしまった。しかし、そのときは「犯人投票で1票くらい入っても、犯人として吊るし上げられることはないだろう」くらいに考えていた。
のちにこれが墓穴を掘る行為に なるとも知らず……。