建物群が朽ちゆくまま立ち並ぶ、物言わぬ無人島
さて、ここからは実際の上陸レポートをお届けしたい。
上陸ツアーを実施する5社の中で私が選んだのは「軍艦島コンシェルジュ」というツアーだ。
島内の見学コースは限られた場所のみで、安全上の観点から炭坑内はもちろん、建物内なども立ち入り禁止。
この「軍艦島コンシェルジュ」は、その立ち入り禁止エリア内の様子をVRやスクリーンで紹介する「軍艦島デジタルミュージアム」の見学とセットになっている。今では見られない内部や当時の歴史、生活を乗船前後に予習復習できるメリットがあるのだ。
実際私も乗船前に、ミュージアムで当時の映像などを見てから軍艦島に上陸したことで、島が住民で賑わった海上都市の時代にタイムスリップしたような感覚のまま、ツアーを楽しむことができた。
クルーズの乗船場所は、大浦天主堂から坂を下りた大浦海岸通りに面する常盤ターミナル。出航すると、左手にグラバー園、右手に長崎三菱造船所などを眺めながら、船は長崎港内を進んでいく。船内ではガイドさんが、映像とともに歴史や当時の解説をしてくれる。
出航から35分程経った頃、長崎港から南西18kmの沖合に、いよいよ軍艦島が見えてきた。100年以上前から人が暮らした建物群が朽ちゆくまま立ち並ぶ、物言わぬ無人島の姿に胸を打たれる。
ここから船は、島を周遊してくれる。上陸する東側には、右端から端島病院・隔離病棟、島最大のマンモスアパート65号棟、端島小中学校などが、中ほど高台には端島神社に残った祠が見える。
そして船はこの周遊でのみ見られる、高層住宅群が密集する西側へ。右手には崩落が進み、骨組みが見えつつある最古の30号棟、その左手に防潮壁の役割も果たしていた31号棟、神社の祠の手前には、屋上に青空農園を作り、島に緑をもたらした18号棟、19号棟などが並ぶ。
周遊を終えたら、東側のドルフィン桟橋からいよいよ上陸だ。