ウクライナに二度と戻れなくなるという恐怖
そして別室に度々連れだされて拷問された。殴られるだけでなく、手と足の4本の指にコードが結ばれ、電気ショックが加えられる。それでも協力の要求を拒むと、体に水をかけられ、電流による痛みが増した。
拷問する男たちはみな覆面をしており、表情は見えない。日によって3〜5人おり、8人に取り囲まれたこともあった。
「奴らはこちらが怯えて、苦しむのを見て、明らかに楽しんでいた。痛みに耐えていると、男たちはいら立ち、さらに痛めつけるのよ。私が泣き叫ぶのを見たがっていた」
オルハは性的な虐待を受けたことも示唆した。
「服をすべて脱がされたこともあった……体を触られた」
私はそれ以上、突っ込んで質問するのをためらった。
オルハは私をまっすぐに見据えながら、感情を排して語っているように見えた。それでも射るような彼女の視線には、何ともいえない意思が表れている。
頭に浮かんでいるであろう自分を拷問した者たちへの蔑(さげす)みか、興味本位とも受け取られかねない私の質問へのいら立ちもあったのかもしれない。私は彼女が同じ目で拷問者を見ていたのではないかと想像した。
身分証を取られてロシアに連れていかれることをオルハは一番恐れていた。男たちはそこを突いてきた。
「おまえをヘルソンから別の場所に連れて行く」
ひどい電気ショックの痛みにくわえ、ウクライナに二度と戻れなくなるという恐怖から、拉致されてから2週間後に要求された内容をソーシャルメディアに書き込むことに同意すると、解放された。しかし、実際には一度もそんな書き込みはしなかったそうだ。