「彼の戸籍を取ってみたら、籍は抜けていなかったんです」

笹本優未さん(仮名・40歳)は、2015年、転職先で出会った彼と、ごくふつうに距離を縮めたという。

「入社したとき、相手は半年前から在籍していて、同じ歳だったこともあって、すぐに打ち解けたんです。終業後に飲みに行ったり、仕事の愚痴を言い合ったり。自然に仲よくなっていきました。当時、彼からは奥さんとうまくいかなくて…と相談をよく受けており相手からの好意も何となく感じていましたが、既婚者と知っていたため彼とは一定の距離を保っていました。

『離婚が成立したので結婚を前提に交際してほしい』と言われた時も、「私は絶対に不倫はしたくない」と伝えた上で離婚済であることを再三確認し、養育費の額など離婚条件も聞き、悩みに悩んだ結果、交際を決めました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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ところが、交際が進むにつれて違和感が積み重なっていく。そして妊娠を告げた後、彼の態度は一変した。

「『親は離婚に反対していたからまだ話せない』『前妻との子どもが不安定だから今は刺激したくない』と、話をはぐらかすばかりで……。その頃から、連絡も急に取りづらくなったんです」

不信感を抱き、興信所に依頼した笹本さんは、調査の結果、衝撃の事実が突きつけられた。

「彼は既婚者だったのです。もう、頭が真っ白になりました。何度も『離婚したんだよね?』と確認して『ちゃんと離婚した』と言われていたのに、周囲にも『離婚した』と本人が言っていたのに、すべて嘘だったんです。怒りを抑えきれず、彼の家に突撃したところ、奥さんらしき女性が出てきて、『離婚したって聞いてますけど、本当なんですか?』と問い詰めたら、奥さんが『帰ってください、警察呼びますよ!』って」

写真はイメージです(PhotoACより)
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修羅場の末、彼とその両親を交えた話し合いが行なわれた。

「彼は土下座して謝罪してきました。震えながらお茶をこぼすくらい動揺していて……。でも、その後も話し合いは平行線で、私は一人で子どもを産んで育てていく決意をしました」

笹本さんは弁護士を立て、慰謝料と養育費を請求。最初は「50万円で」とふざけた提案をされたが、彼が独身と嘘をついていた証拠を揃えて裁判所に提出し、粘り強い交渉で条件を引き上げた。

「結果、慰謝料220万円と出産費用の一部を受け取ることができました。養育費も強制執行条項をつけて調停を成立させ、今もきちんと支払われています。産後1か月だけ実家に頼って、その後は子どもと二人暮らし。児童館に通ったり、副業を始めたり、とにかく“閉じこもらない”を意識しましたね。怒りだけでは前に進めないから……。

父親が居なくてもこの子と二人で絶対に幸せになる、そう決めました。最初は裏切った彼へ怒りで苦しかったけれど、その気持ちはやがて、『結果的に大きな嘘をつかれたけど、私は本当に全力で彼を好きだった。その想いに嘘も後悔もない』と怒りを手放して気持ちを昇華することができました」

写真はイメージです(PhotoACより)
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最後に、同じ境遇にある女性たちにメッセージを送る。

「泣き寝入りだけはしないでほしい。慰謝料、養育費、認知――取れるお金は必ず取ってほしいです。専門家を頼って、証拠をそろえて動けば、必ず道は開けます。そして、たとえ相手が何もくれなくても、自分の人生は自分のもので自分の覚悟次第。子どもと自分の幸せを最優先に、強く賢く生きてほしいと思います」